佐々陽太朗の日記

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『僕は人生についてこんなふうに考えている / 浅田次郎(著)』 (新潮文庫)を読む


『僕は人生についてこんなふうに考えている / 浅田次郎(著)』 (新潮文庫)を読みました。

欲しい本がありTSUTAYA広峰店に買いに行ったときに、新潮文庫の「男の学校フェア」が目にとまったのだが、その中にあった本である。私は浅田次郎氏の小説の大ファンである。こんなものを見つけてしまったら買わずにいられないのだ。



裏表紙の紹介文を引く

「私の人生は私の矜りである」―人々の希望と幸福を描いてやまない作家・浅田次郎。その筆致は、いつも読者に「こんな生き方もある」と語りかけている。多彩な作品群から著者の人生観があふれる文章を「生きる力の養い方」「勝ち運の極意」「才能を磨く方法」など11のテーマに分けて精選。浅田文学を一望し、「自分の人生」に誇りを持つための157の言葉。生きる勇気の湧く一冊。

要するに数ある浅田氏の小説・随筆等から編者が心に残るセンテンスをつまみ出し、類型化して編集しているのである。氏の小説の多くを読んでいる者にとっては、一度読んだことのある文章にもう一度触れることになるのだが、それはそれで別の味わいがある。


中でも特に気になったセンテンスを以下に引いてみる。

結果を運のせいにしたら、
人生は一歩の前進もせず、
人間は一センチの成長もしない。
                                 『サイマー!』

埋もれてしまう才能とか、
報われぬ努力とか、
武運つたなき敗戦とかいう現象は人生にままある。
だがたいてい、我慢の利く人間は何とかなるものだ。
                                 『勇気凛凛ルリの色』

自分より気の毒な人間のいるうちは、辛抱をしなけりゃいけない。
                     『天切り松 闇がたり <第三巻> 初湯千両』

「老人はカラダが弱いから席を譲る」というのが今の教育ですが、儒教的な倫理観から言うと「お年寄りは私たちの生活を築いてくれた先輩だから、それに感謝して席を譲る」のです。お年寄りは、思いやるのではなく敬う対象なのです。
                                    『絶対幸福主義』

「男てえのァ苦労なもんで、一日は朝から晩まで、一年は正月から晦日まで、一生はおぎゃあと生まれてからくたばるまで、俺ァ男だ俺ァ男だと、てめえ自身に言いきかせて生きにゃならねえもんさ。そのお題目をいっときでも忘れりゃあ、とたんに楽にゃなるがの」
                        『天切り松 闇がたり <第二巻> 残侠』

「男なら、腹がへってねえってえ嘘は、一生つき続けにゃならねえ」
                           『きんぴか <3> 真夜中の喝采

「男なら男らしくいきなせえよ。潔く死ぬんじゃねえ、潔く生きるんだ。潔く生きるてえのは、てめえの分を全うするってこってす。てめえが今やらにゃならねえこと、てめえがやらにゃ誰もやらねえ、てめえにしかできねえことを、きっちりやりとげなせえ。そうすりゃ誰だって、立派な男になれる。
                                     『壬生義士伝

抜き書きしてみて解ったのだが、私の好きな言葉にはある傾向があるようだ。単語であらわすと「辛抱」「矜持」「規範」「覚悟」・・・そうしたものをイメージさせる言葉です。私がハードボイルド小説を愛する所以です。