佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『KAPPA / 柴田哲孝(著)』 (徳間文庫)を読む

”彼”は潜んでいた。
浅い沼の底で、ただひたすらに獲物を待ち受け、
その瞬間のために備えていた。

『KAPPA / 柴田哲孝(著)』を読みました。ミステリーに造詣の深いプーサンさんに薦めていただいた本です。

裏表紙に書いてある紹介文を引きます。

ブラックバスを釣りに来た男が、上半身を引きちぎられた死体で発見された。猟奇殺人なのか?地元署の捜査は混迷、難航。宿無しルポライターと、引退間際の老漁師、引き篭もりの少年、はみ出し者の田舎刑事が、事件の謎を解くため活躍する。少年と男たちのひと夏の冒険譚。名作『TENGU』に繋がる大藪春彦賞作家・柴田哲孝の記念碑的作品。

面白い小説です。ミステリーと言っていいのか、サスペンスと言っていいのか、ハードボイルドと言っていいのか、そのどれもが当てはまる小説です。かつてCBSソニー出版から出版されていたが、何故か絶版になっていた。柴田哲孝氏のデビュー作であり記念碑的作品であれば、普通は絶版になどしないはず。絶版になった理由が何なのかもミステリー。それを徳間書店が復刊したようだ。
主人公のルポライター、刑事、老漁師、少年、主立った登場人物は男です。彼らに共通する気持ち、彼らがお互いを認め合いなんとなく理解しあえる気持ち、そうした男の中にあるある種の「空気」みたいなものが、小説全体に流れています。そうした意味で、この小説はハードボイルドなのです。
バス・フィッシュイングについての話がふんだんに出てきます。バサーにとっては、その辺りも楽しめそうです。私はバスはやりませんが、子供の頃から釣りが好きだったので、その辺りの空気もわかるんだなぁ。