澪、いつか必ず、お前はんはあの登龍楼を料理で負かすやろ。
あほな真似して自分の器量を落とすような真似をしたらあかん。
人としての器量は落としたらあかんのやで。
高田郁(かおる)さんの時代小説『八朔の雪』を読みました。
サブタイトルは「みをつくし料理帖」。
久々に人に強く勧めたい小説に出会いました。
電車やバスの中で読んではいけません。
不覚にも涙してしまいますから・・・
裏表紙の紹介文を引きます
神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!
小さい頃、易者に「雲外蒼天」(艱難辛苦が待ち受けているが、その苦労に耐えて精進を重ねれば、必ずや真っ青な空を望むことができる)の相と占われた主人公の澪。仲良しの野江は高麗橋の大店のこいさん、「旭日昇天」(天下取り)の相と占われる。大坂を襲った大洪水で澪は両親を失い、野江とも会えなくなってしまう。澪は有名料理屋「天満一兆庵」の女将に拾われ料理人を志すが、その「天満一兆庵」も火事で焼失する。澪はその後も数々の艱難辛苦に襲われるが、周りの人たちの人情に支えられながら健気に頑張る。澪の運命は・・・? 天下取りの相といわれた野江の運命は・・・? 果たして二人はもう一度めぐり逢うことが出来るのか・・・?
読み始めたら最後、物語の行方を知りたくてどんどん読み進めてしまう。読み終えてなお、続きが気になる。是非、続編を書いていただきたい。巻末に料理のレシピが紹介されているのも嬉しい。すばらしい本です。
【追記】
文庫本の帯に角川春樹氏のコメントがある。
「山本周五郎の『さぶ』以来の感動!十年に一冊の傑作に、涙が止まらなかった。」
正直なところ、どちらが・・・というと、小説としては『さぶ』に軍配が揚がると思う。
しかし、『さぶ』と並び称するだけの価値はある。高田郁氏が山本周五郎氏を越えることが出来るかどうか、先が楽しみです。
『さぶ』については、以前こちらに書きました。よろしければ読んで下さい。
http://d.hatena.ne.jp/Jhon_Wells/20071101