佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『だいこん / 山本一力(著)』(光文社時代小説文庫)を読む


蕎麦湯を欲しがっている客。
薬味が欲しそうな客。
食べ終わって煙草盆を探している客。
客がなにを欲しがっているかを、つばきは感じ取っていた。
大きくなったら、あたいもおかあちゃんとおんなじことがしたい・・・・・・。

だいこん (光文社文庫)

だいこん (光文社文庫)

山本一力氏の人情時代小説『だいこん』を読みました。
先月1日に同じく山本氏の『銀しゃり』を読んだときにKさんからご紹介いただいた本です。

http://d.hatena.ne.jp/Jhon_Wells/20090731#1249134690

良かったです。600Pを超える長編ですが、物語にどんどん引き込まれ一気読みしてしまいました。
これだけ一気読みさせられると文句のつけようがありません。
5点満点中5点を文句なしにつけます。

裏表紙の紹介文(あらすじ)を引きます。

江戸・浅草で一膳飯屋「だいこん」を営むつばきとその家族の物語。腕のいい大工だが、博打好きの父・安治、貧しい暮らしのなかで夫を支える母・みのぶ、二人の妹さくらとかえで―。飯炊きの技と抜きん出た商才を持ったつばきが、温かな家族や周囲の情深い人々の助けを借りながら、困難を乗り越え店とともに成長していく。直木賞作家が贈る下町人情溢れる細腕繁盛記。

女性が料理屋を営んで店を繁盛させていく。主人公はいくつもの困難にけなげにも立ち向かう。そんな主人公を周りの人の人情が支える。7月の下旬に読んだ高田郁さんの小説『八朔の雪』も似たようなお話でした。

http://d.hatena.ne.jp/Jhon_Wells/20090731#1249134690

『だいこん』が書かれたのが2002年〜2004年。『八朔の雪』が書かれたのが2009年ということなので、ひょっとして高田郁さんは山本一力氏の本を読まれて、自分もそのような本が書きたいと思われたのかもしれません。
どちらの話も出世話に多いご都合主義の誹りを免れないでしょう。しかし、それがどうした。読者は貧しいながらも矜持を持ち、健気に働く女性主人公と周りの人情にホロリとさせられ、主人公が幸せを手に入れることに心から拍手を贈るだろう。それで良いではないか。