佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

つばさよつばさ

1月18日

つばさよつばさ

この期に及んで私はついに、情けない若者の頭をゴツンと叩いた。
「英語で、ありがとうは何て言うか知っているだろう」
「サンキュー」
「ていねいに言え」
「サンキュー・ベリー・マッチ」
「そうだ。そう言ってきちんと握手できるようになるまでは、二度と日本から出るな。お前には権利があっても資格がない
                    (本書P226、「ありがとう」より)

 

浅田次郎氏の旅エッセイ『つばさよつばさ』(小学館文庫)を読みました。
今、時の会社となっているJAL機内誌「SKYWARD」の連載エッセイである。私は飛行機嫌い(というより単に高所が怖いだけなのだが)なので「SKYWARD」という誌を読んだことはない。今も連載されているのかどうかも知らない。飛行機の旅とは無縁の私ではあるが、浅田氏のエッセイは楽しめた。浅田氏の本にハズレは無い。

裏表紙の紹介文を引きます。

「この数年間の平均をとれば、海外が1年に6回から7回で延べ日数が60日間、国内が約30回で、やはり60日間程度である。かくて私は1年の3分の1を、羈旅(きりょ)の空に過ごしていることになる」当代随一のベストセラー作家は厳しい締めきりの間隙を縫って砂漠の極上ホテルへ、緑したたる亜細亜の街へ、非日常の体験を追い求めて旅の空に……。エジプト人が連呼するヤマモトヤーマとは?(「ピラミッドの思いこみ」)、貸切同然だったスパに突然金髪女性が!(「混浴の思想」)ほか「旅」を綴った珠玉のエッセイ40編。JAL機内誌「SKYWARD」の人気連載待望の文庫化。

40編すべてなかなか良い話であるが、中でも印象に残ったのは冒頭に引用した部分である。ロサンジェルス空港で欠航便が出た時に、日本の青年が何もせず、ただ、廻りが(あるいは航空会社が)なんとかしてくれるのを待っている。日本ならこんな時、航空会社が親切に対応してくれるのかも知れない。しかし、ここはアメリカ、「自己責任」の国である。自分で次善の策を考え、チケットを取り変える方法を考えなければならない。結局、浅田氏の同行者が八方手を尽くしてチケットをとってやるのだが、そのあいだもその若者は人ごとのようにボーっとしている。極端な例ではあるが、これが甘ったれた現代日本人の姿だ。最近の日本の姿は情けないこと甚だしい。誰もが国や行政や企業に対して「アレをして欲しい。コレをして欲しい」と声高に叫ぶ。それをしてくれなければひどいことのように非難する。民主党政権になってその傾向にさらに拍車がかかっている。日本は「おねだりの国」になり果ててしまった。もうこの国には「自己責任」という言葉はない。嘆かわしいことだ。