佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

和歌山紀行・その6 『あおい茶寮でのオジサンは礼儀正しい』の巻

1月30日

和歌山紀行・その6 『あおい茶寮でのオジサンは礼儀正しい』の巻

和歌山を訪れた目的の最上位にあるのは何と言っても「クエ」を食べること。
しかし、旅というものはその後も大事である。夜は長い。食事の後、街をぶらつき街の雰囲気を満喫する。それも楽しみだ。食事の時間には、まだ少し間があるので街を散策しながら夕食場所「あおい茶寮」を目指すことにした。
ホテルを出てしばらく歩くと「アロチ」という繁華街にでた。「アロチ」とは変わった呼び名であるが、ガイドブックによると「新地」に由来するという。なるほど。
「本家アロチ丸高中華そば」を発見! 和歌山市デビューの私もその名だけは聞いたことがあるという有名店。彼の太田和彦氏も著書「ひとり旅、ひとり酒」にこの店のことを書いていたのだ。「最後の〆はラーメンで」という展開も十分あり得る。要チェックの店だ。しっかりと場所を頭にたたき込む。

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アロチを抜けずんずん歩いていくと「ぶらくり丁」。このあたりは商店街ではあるが、飲み屋も多い繁華街のようだ。和歌山市の人口は40万人弱と聞く。それにしては飲み屋が多い。良い町だ。

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ここでは居酒屋「千里十里」(ちりとり)の場所をチェック。ここは居酒屋巡り旅のバイブル「居酒屋美酒覧」にも掲載されている有名店。ひょっとして二次会に来るかも知れないのだ。
そして「ぶらくり丁」と言えば名曲『和歌山ブルース』に歌われた街。

   逢いたい見たい すがりたい
 そんな気持ちに させるのは
 ぶらくり丁の 恋灯り
 真田堀なら ネオン川
 和歌山泣きたい あぁやるせない

雑賀橋のたもとに和歌山ブルースの歌碑を発見。残念ながら修復中でしたが、曲がエンドレスでかかっていました。おぉ!気分がぐっと盛り上がってきました。今夜は呑むぞ!!

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和歌山ブルースの歌碑を後にして、良さそうな居酒屋を物色しながら南へ歩いていくとけやき大通りに出る。和歌山城が見える。我々が目指す「あおい茶寮」は和歌山城公園の南あたりのはず。城内を歩くことにした。一の橋を渡り大手門から城内にはいると大きなクスノキがある。推定樹齢は400~500年という古木がいやがうえにも我々の旅情をかき立てる。今夜は徹底的に呑むぞ!!・・・・??

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いやもう、ここまで来るとお城を築城したのが豊臣秀吉が弟の秀長であったとか、そのお城が昭和20年7月9日の戦災で消失したとか、そのようなことはどうでも良くなっているのである。クエを食べたい!酒を飲みたい!クエを食べたい!酒を飲みたい!酒を飲みたい!酒を飲みたい・・・そればっかりなのである。しばらく「ほうっ」などと言いながら辺りを見回していた我ら六人の足も心なしか急ぎ足になり、キョロキョロ辺りを見回す眼も景色を愛でる眼ではなく、欲望に目覚めた怪し眼になっているのだ。斯くして我々はそそくさと岡口門から城を出て、赤信号に邪魔されることしばしの後、岡公園横をずんずんと進み「あおい茶寮」に到着することとなる。

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到着した「あおい茶寮」は門にかがり火を焚き、門をくぐると情緒豊かな日本庭園を飛び石が誘ってくれる雅な料亭であった。ついさっきまで、クエを食べたい!酒を飲みたい!クエを食べたい!酒を飲みたい!酒を飲みたい!・・・とぎらぎらしていた我ら六名の立ち居振る舞いも、門をくぐったとたんお行儀良くなっているのだ。我々はこのような上品な場所に慣れていないのだ。仕方がないのだ。

玄関をくぐると「お待ちしておりました。いらっしゃいませ」と初々しい女性が迎えてくれた。我ら六人のうち四人のオジサン組の目尻はでれっーと垂れ下がり、顔はだらしなくなりながらも、「ちょっと早く着きました。ごめんなさいね」などと妙に礼儀正しいのである。我々はこのような上品な場所に慣れていないのだ。仕方がないのだ。しかも初々しい女性に優しくしてもらうこともほとんどない人生だったのだ。仕方ないのだ。残り二人の女性の連れはというと、そのような男どもをすうっと眼を細めて冷ややかに見ているのだ。怖いのだ。(つづく)