佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2010年の読書記録(1月~6月初旬)  超超長文注意!

2010年の読書メーター

 

読んだ本の数:104冊
読んだページ数:34604ページ

 

 

 読んだ本の数、ページ数は年間累計です。

 昨年の読書をふり返ると、森見登美彦氏『新釈 走れメロス 他四篇』に始まり、森見登美彦氏『美女と竹林』に終わったといえる。思えば一昨年暮れに『夜は短し歩けよ乙女』に出逢って以来、すっかり森見ワールドにはまってしまった。一昨年からはまった作家と言えば万城目学氏も同様である。上半期は六月に『鹿男あをによし』を読んだだけだが、下半期に『プリンセス・トヨトミ』ほかを読んだ。森見氏と万城目氏の京大コンビの作品とは今後末永く付き合っていくことになるだろう。かといって、私は京大に縁もゆかりもない。しかし構わないのだ。この二人の有り余る才能、人並み外れた知性に触れたとき、私は「生まれ変わったら京大へ行く。二浪、三浪しても京大へ行く」と固く心に誓ったのだ。何が素晴らしいといって、彼の才能の浪費ぶりほど素晴らしいものはない。その隠そうにも隠しようのない有り余る才能を研究や発明、あるいは生産やビジネスという世の中に役立ちそうなことに使うのではなく、小説などというあほうなものに注ぎ込んでいる。それも読者から「くだらねぇ」といわれる小説にである。彼らの小説はまさに才能の屍。その屍を累々と積み上げていく姿、まことに天晴れである。

 さて、もう一人はまってしまった作家がいる。その名は有川浩氏である。『塩の街』『海の底』『空の中』という自衛隊三部作、『図書館戦争』をはじめとした図書館シリーズ、近く映画が公開予定の『阪急電車』などなど、読んでも読んでもハズレがない。すべて極上のエンターテイメントであります。女史の作品の多くに共通するキーワードはラブコメツンデレ、純愛イジイジである。私は今年50を越えたオジサンだが「ラブコメツンデレ、純愛イジイジ」が大好物なのだ。文句あっか!

 …で、上半期のマイ・ベストはといいますと、森見氏でもなく、万城目氏でもなく、有川氏でもないのであります。近藤史恵氏の『サクリファイス』を選びたい。読者の心をとらえて放さない緊迫感、意外な結末、登場人物の気高き心、どれをとっても極上の作品でした。

 一方、マイ・ワーストはといえば、申し訳ないのですが道尾秀介氏の『向日葵の咲かない夏』に決定。これほど気分の悪い本もめずらしい。「このミステリがすごい2009年度1位」という宣伝文句に騙されて読んでみたものの見事に騙されました。一位になったのは作家・道尾秀介氏であって、この小説ではなかった模様。ならば、口直しに道尾氏の他の小説を読んでみようかともちらりと思ったのですが、未だに氏の本を手に取ることなく今日に至っています。出会いが悪すぎました。ひょっとしたら一生読めないかも知れません。

 

 シリーズものとして注目は以下のふたつ

 つづきは次のブログにて……

 


新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
小説を書くとは何なのか。映画を撮るとは何なのか。恋とは何か。学生の街、京都には無駄遣いされた才能の屍が累々と積み重なっている。その果てしない浪費の中にキラリと光る美があり、真実があり、あるいは真実と見紛う幻がある。森見氏の小説を読むと京の街をぶらつき、才能の屍を拾い集めたくなる。
読了日:01月03日 著者:森見 登美彦

 


四畳半神話大系 (角川文庫)四畳半神話大系 (角川文庫)
ここにひとりの男がいる。頭脳は明晰なれど、現実世界を生き抜くにはいささか実戦不足。他にとりたてて特徴なく、容姿も十人並みである。そんな彼の最大関心事は学問でもなく芸術でもなく女である。しかし彼の有り余る知性はそれをあっさり認めてしまうことを許さない。彼は屈折した自意識過剰という名のストイシズムの権化である。そんな彼にも運命の乙女が現れる。いかにして彼は運命の女(ひと)に巡り逢えたのか?それをここで語るわけにはいかない。「成就した恋ほど語るに値しないものはない」けだし名言である。
読了日:01月06日 著者:森見 登美彦

 


闘う純米酒 神亀ひこ孫物語闘う純米酒 神亀ひこ孫物語
日本酒について、教えられ、考えさせられるところ多い本です。埼玉県は蓮田の小さな蔵、神亀酒造七代目蔵元、小川原良征氏が昔ながらの酒造りにこだわり、造りの全量を純米酒に切り替えることによって本物の日本酒を全国に知らしめていった軌跡を追う。この本を読むと、小川原氏のような方がいて、我々が美味しい酒をいただけるのだという感謝の念でいっぱいになる。実際に「ひこ孫」を飲んで、これが本来の熟成酒なのだと再確認した次第。ありがとうございます。

 


読了日:01月09日 著者:上野 敏彦
或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)或る「小倉日記」伝 (新潮文庫―傑作短編集)
収められているのは12編。その多くの作品に共通するのは、非凡な才能を持ちながら世間から正統な評価を受けられない人を描いている点である。評価されないのは生まれ、貧乏、学歴、身障の故である。貧乏な家に生まれて、高等小学校卒業後すぐ働きに出て、苦労しながら小説を書いた氏の境遇が色濃く反映されていると思える。その思いは相当深く鬱積しており、屈折しているようにも見える。怨念といってもよいだろう。この劣等感にも似た想いの深さが氏をして原稿用紙に向かわしめたのか。
読了日:01月17日 著者:松本 清張

 


つばさよつばさ〔文庫〕 (小学館文庫)つばさよつばさ〔文庫〕 (小学館文庫)
考えさせられるのは「ありがとう」に出てくる日本の青年。極端な例ではあるが、これが甘ったれた現代日本人の姿だ。最近の日本の姿は情けないこと甚だしい。誰もが国や行政や企業に対して「アレをして欲しい。コレをして欲しい」と声高に叫ぶ。それをしてくれなければひどいことのように非難する。民主党政権になってその傾向にさらに拍車がかかっている。日本は「おねだりの国」になり果ててしまった。もうこの国には「自己責任」という言葉はない。嘆かわしいことだ。
読了日:01月18日 著者:浅田 次郎

 


遊戯 (講談社文庫)遊戯 (講談社文庫)
読まなければよかった。藤原氏がこの物語にどのような結末を用意していたのか、気になって仕方がない。思えばこの本を手に取った時から読んで後悔することはわかっていたのだ。だって、未完の小説なんて、〆の河豚雑炊が無い「河豚のフルコース」のようなものだからね。かくなる上は、どなたかに物語の続きを書いてもらうしかない。1989年にロバート.B.パーカーがレイモンド・チャンドラーの遺作「プードル・スプリングス物語」を完成させたように。どなたかお願いします。大沢在昌さん、石田衣良さん、志水辰夫さん、お願いします。
読了日:01月18日 著者:藤原 伊織

 


空の中 (角川文庫)空の中 (角川文庫)
生物と無生物。感情と論理。政府と自衛隊員。宮じいと僕、そして佳江。春名高巳と武田光稀三慰。単一と分裂、そして統合。淡き恋、ふたつ。この小説を読むと、如何に我々が非論理的世界に生きているか、如何に他を顧みず自分勝手に生きているかを思い知る。そして如何に人生がすばらしいかを・・・
読了日:01月24日 著者:有川 浩

 


向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
ミステリーは読者を驚かせればよいというものではありません。読者が想像しないような意外な結末を用意すればよいというものでもありません。確かに、いろいろな技巧が凝らされていました。その技巧は高度なものであることも認めます。しかし、私に言わせれば、これは小説ではありません。以上。
読了日:01月25日 著者:道尾 秀介

 


太田和彦の居酒屋味酒覧―精選173太田和彦の居酒屋味酒覧―精選173
この本の1ページ、1ページを捲りながら、その居酒屋の佇まいに思いを馳せ、最初の一献を口に含む我が身を想像する。それだけで私は幸せになれるのです。そしていつかはその店の暖簾をくぐろうと静かに決意する。そうすることで明日への希望、生きる活力が湧いてこようというもの。ありがたい本です。今後、遠方への出張には携帯しなければなりません。全国の居酒屋を飲み歩くのだ。
読了日:01月27日 著者:太田 和彦

 


身の上話身の上話
私はこの小説を読む間中「運命」という言葉を思いうかべていました。この小説の主人公"古川ミチル”の流され方には、単に流されていると片付けられない事情があります。「あぁ、そうなってしまうよなぁ」と思ってしまうような状況がそこにあるのです。もちろん違う道を選ぶこともできたはずです。しかし、自分が違う道を選ぶだろうかというと自信が持てない。ミチルと同じ道を選んでしまうのではないかと、いやきっと同じ道を選んでしまうと思う自分に愕然とする。
読了日:01月29日 著者:佐藤正午

 


四度目の氷河期 (新潮文庫)四度目の氷河期 (新潮文庫)
父はどんな人だったのか。姿どころか名も知らない。そんな父を僕は17年と11ヶ月をかけて探し求めた。生まれながらに父のいない僕が大人に成長する姿を描く。そこにはいつも母さんがいた。そして、同級生のサチの存在があった。男の子は母を、あるいは恋する女の子を守りたいと思った瞬間から男になるのかも知れない。
読了日:02月03日 著者:荻原 浩

 


騒乱前夜―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)騒乱前夜―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)
損得で動かず、義を見て動く。受けた恩に報いるためには命も顧みない。人情に厚く、優しき心を秘めつつも、剣は時に非情。赤目小藤次は男でござる。
読了日:02月03日 著者:佐伯 泰英

 

 


塩の街 (角川文庫)塩の街 (角川文庫)
この小説に出てくるカップル「秋庭と真奈」「由美と正」は今風のカップルながら、そのメンタリティーはけっこう古風ですね。『空の中』に出てくる「瞬と佳江」「高巳と光稀」もそうでしたけど。言いたいことを言えない、近づきたいのに近づけない、お互いをかけがえのない存在として大切に思いながら、お互いを思いやりすぎてぎくしゃくする。このイジイジ感がたまりません。それから、脇役で登場する入江慎吾、ナイスキャラです。海堂尊氏の小説に出てくるロジカルモンスター・白鳥圭輔にも似た圧倒的存在感。脇役が光ってるのも良い小説の条件です
読了日:02月06日 著者:有川 浩

 


ひとりガサゴソ飲む夜は・・・・・・ (角川文庫)ひとりガサゴソ飲む夜は・・・・・・ (角川文庫)
このエッセイの中で人間が一生の間に飲めるビールの量はせいぜい25メートル・プール一杯分しかないというくだりがある。それを夜中にビールを飲みながら読みつつ、本棚から村上春樹氏の『風の歌を聴け』を持ってきて「一夏中かけて、僕と鼠はまるで何かに取り憑かれたように25メートル・プール一杯分ばかりのビールを飲み干し、「ジェイズ・バー」の床いっぱいに5センチの厚さにピーナッツの殻をまきちらした」と書いてあるのを確認し、「村上はん、大法螺でんな~、ウシシッ!(^o^)」などとツッコミを入れている私はつくづくアホだと思う
読了日:02月08日 著者:椎名 誠

 


サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
本書は読者の想像を超える意外な結末を用意した優れたミステリであり、読み進むとともに緊迫感が深まる極上サスペンスであり、若者の微妙な心の揺れを描いた青春小説であり、気高き男を描いたハードボイルド小説である。
読了日:02月10日 著者:近藤 史恵

 


しあわせ食堂しあわせ食堂
この本の最大の特徴は奇人にして天才、異端にして反俗の画家、武内ヒロクニ氏の挿絵です。色遣い、構図が大胆でページを捲るたびに「おっ!」と目を奪われます。その絵はヒロクニ氏の奥様(幸穂里さん)がテーマとなる食べ物を料理され、それを題材にヒロクニ氏が描かれたらしい。画の下には奥様が書かれたひとこと日記が掲載されていて、それを読むとお二人の様子が垣間見えて微笑ましい。
読了日:02月11日 著者:武内 ヒロクニ,毎日新聞夕刊編集部

 


海の底 (角川文庫)海の底 (角川文庫)
これで有川浩さんの自衛隊三部作の全てを読んだことになる。すっかり有川さんにはまってしまいました。読者を物語に引き込む力は天性のものか。キャラクターに魅力があり親しみやすいので読み始めるなり入りこんでしまった自分に気づく。例によって初々しいというか、イジイジとじれったいというか、有川さんお得意のやきもきした恋もこの小説の魅力です。
読了日:02月13日 著者:有川 浩

 


田中真紀子の正体田中真紀子の正体
虚像と実像。気になるところです。
読了日:02月14日 著者:上杉 隆

 

 


夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)
「アイという最後の謎」が解けてませんで、海堂はん。殺生でっせ。今夜眠れませんがな・・・
読了日:02月17日 著者:海堂 尊

 

 


ひと粒の宇宙 (角川文庫)ひと粒の宇宙 (角川文庫)
短い物語だけにエッセンスが抽出され裸の作者が見えるような気がする。私が好ましいと思ったのは「ミケーネ(いしいしんじ)」、「おねがい(石田衣良)」、「パリの君へ(高橋三千綱)」、「曇ったレンズの磨き方(吉田篤弘)」。逆にそうでもないなと思えるのは、「永遠の契り(歌野晶午)」「凍りつく(高橋源一郎)」といったところ。作品の優劣ということではなく、あくまで好みの問題ですが・・・・・
読了日:02月19日 著者:堀江 敏幸,嶽本 野ばら,勝目 梓,西村 賢太,吉田 篤弘,佐野 洋,片岡 義男,橋本 治,古川 日出男,高橋 三千綱,矢作 俊彦,石田衣良 はじめの全30,平野 啓一郎,重松 清,高橋 克彦,大岡 玲,いしい しんじ,石田 衣良,又吉 栄喜,佐伯 一麦

 


さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)
この小説を読んでいる間中、私は救いを求めていました。救いなどないことが判っていながら。しかし私は娘を獣に殺された父親になんとか救いをと、作者・東野氏に対し心の中で手を合わせていました。そう、私はたとえば藤沢周平氏が小説の中で、主人公の下級武士に一分をたててやるように、割り切れない悲しみの中にも何らかの救いを用意してやって欲しかったのです。小説中、東野氏は主人公・長峰重樹に次のように語らせます。「法律は人間の弱さを理解していない」と・・・
読了日:02月20日 著者:東野 圭吾

 


それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)
この小説の登場人物の良いところは、誰もが自立して生きていること。他人と絶妙の距離をとり、人の負担になるほどくっつきすぎず、寂しいほど離れすぎない。その距離は「ヤマアラシのジレンマ」と呼ばれる心地よい距離。「自己の自立」と「相手との一体感」という2つの欲求、それを、ことさらに主張することなく、人に押しつけることなく、唯々、生真面目に大切にして生きていく。この小説の中では、みんな大人だ。子供でさえも。
読了日:02月22日 著者:吉田 篤弘

 


小石川の家小石川の家
日常の全てにおいて家族に対し教養と高尚さをもって生きることを科し、安直な卑俗性を憎んだ祖父・露伴は、幼い孫・玉にさえ思慮深くきちんといきることを求める。母・文もそのような露伴の意に沿って娘を厳しく躾ける。ここに現代に生きる私たちが忘れかけている生き方があります。その忘れかけている生き方とは、たとえば「長幼の序」であり「凛と背筋を伸ばした生き方」です。この本を読み一昔前の凛とした生き方に触れるにつれ、私たちが失いつつある「気高さ」という価値観が呼び覚まされます。読み終えてなんと清々しくなることか。
読了日:02月27日 著者:青木 玉

 


日本を讒(ざん)する人々日本を讒(ざん)する人々
タイトルにある「讒(ざん)する」とは「事実を曲げて人を悪く言い、人を貶める」という意味だそうです。渡辺昇一氏、金美齢氏、八木秀次氏のお三方が鼎談で日本を讒する人を名指しで指弾します。私は三氏が本書の中で事実として語っておられることの当否をつぶさに検証する手段を持ちません。しかし、これまでテレビ、雑誌などで三氏の仰ることを聴いてきた経験から、このお三方が邪(よこしま)な人でないことは判っているつもりです。加えて、本書に書かれていることの基本的なところ、謂わば根底に流れる考え方は全く当を得ていると思います。
読了日:02月28日 著者:渡部 昇一 金 美齢 八木 秀次

 


勝手に来やがれ (集英社文庫)勝手に来やがれ (集英社文庫)
本編には題名に通し番号をふっていますが、本書にはそれがない。すなわち番外特別編ということです。クリスマスの特別編に登場した”ディーゼル”が再登場。そして今回はバレンタイン・デーにあわせたストーリー。そう、恋する人も恋してみたい人もみんなバレンタイン・デーをハッピーに過ごしたいと願っている。今回はステファニーがそんな願いを叶えるキューピッド役を果たすという甘くハート・ウォーミングなお話。楽しめます。
読了日:03月03日 著者:ジャネット イヴァノヴィッチ

 


妖異金瓶梅―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)妖異金瓶梅―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)
全篇を通じてエロティシズムが漂い、潘金蓮という稀代の淫婦の性(さが)が描かれている。それにしてもこの潘金蓮という女、男にすればなんとも怖ろしい魔性の女でありながら強烈に心を惹かれてしまう魅惑の女である。潘金蓮を目の当たりにし触れてしまったが最後、男はその虜になってしまうだろう。それが間違ったことであり、いけないことだと判っていても、男は否応なしに潘金蓮の蟻地獄に身を落としてしまうのだ。気の小さい私としては潘金蓮のような女に出会うことがないように唯々祈るのみである。しかし、一度だけほんのちょっと会ってみたい
読了日:03月07日 著者:山田 風太郎

 


図書館戦争図書館戦争
SF的要素あり、恋愛小説的要素もありの極上エンターテイメントです。恋愛小説的要素というより「ラブコメ」と云った方がしっくりくるかもしれません。小説に高尚さ、深さ、芸術性を求める方には読むことを薦めません。しかし、この本が低俗かと言えばさにあらず。浅いかと言えばこれまた否。登場人物の心根は高潔で、作者の書籍に対する愛は深いと観ました。要するに有川氏はストレートなのですね。単純でわかりきったことを小難しく書くような小賢しいまねをしない潔さがあります。そうした潔さとは裏腹に小説中の恋愛はすごくイジイジ。
読了日:03月07日 著者:有川 浩

 


聖なる夜に君は (角川文庫)聖なる夜に君は (角川文庫)
人それぞれに好みはあると思いますが、私のお気に入りは蓮見圭一氏。不倫や離婚よりも、やっぱり温かい愛が良いです。思い起こせば以前読んだ『水曜の朝、午前三時』も素晴らしかった。
読了日:03月13日 著者:大崎 善生,盛田 隆二,島本 理生,蓮見 圭一,奥田 英朗,角田 光代

 


あたしはメトロガール (ソフトバンク文庫)あたしはメトロガール (ソフトバンク文庫)
ジャネット・イヴァノヴィッチといえばステファニー・プラム・シリーズですが、魅力的なヒロイン「アレグザンドラ・バーナビー」の登場です。主人公のキャラクター、物語の面白さともにステファニー・プラム・シリーズに軍配があがるものの、さらにパワーアップして人気シリーズになる可能性ありとみました。
読了日:03月14日 著者:ジャネット・イヴァノヴィッチ

 


黄昏の狙撃手 (上) (扶桑社ミステリー)黄昏の狙撃手 (上) (扶桑社ミステリー)
読了日:03月18日 著者:スティーヴン・ハンター

 

 

 


黄昏の狙撃手 (下) (扶桑社ミステリー)黄昏の狙撃手 (下) (扶桑社ミステリー)
『極大射程』や『ブラックライト』ほどの緊迫感と高揚感は無いものの、それなりに楽しめました。ミステリとしての仕掛けはそこそこ良い線をいっています。しかし、ガンファイトにおいてはボブが強すぎるのか、相手が迫力に欠けるのかハラハラ感が若干不足。総合して5点満点の4点といったところ。4点は甘いというご意見もありそうですが、わたしはハンター・ファン。それ以下の点をつける気はありません。(笑)
読了日:03月18日 著者:スティーヴン・ハンター

 


ストロベリーナイト (光文社文庫)ストロベリーナイト (光文社文庫)
こいつは面白い。麻薬、暴力、虐待、退廃、絶望、孤独、禁忌、盛夏、記憶、快感、不快、弱者、犠牲、強制、狂気、再生、組織、階級、抜擢、競争、懐疑、尊敬、思慕、連帯、反発、包容、救済、矜持、あらゆる要素が絡まり合い緊迫したストーリーが展開される。ちょっとグロな表現があるものの、物語の性質上やむを得まい。警視庁捜査一課殺人犯捜査係主任警部補姫川玲子シリーズ、次作『ソウルケイジ』にも注目。今後目が離せない。
読了日:03月20日 著者:誉田 哲也

 


図書館内乱図書館内乱
図書に良書と悪書の区別があるのか? あるとすればその判断基準とは何か? あるいは誰が判断できるのか? 公序良俗とは? 表現の自由とは? 人々の知る権利とは? 読者は様々なことを問いかけられながら読み進めることになる。しかし、物語自体は深刻なものではない。流れる空気はあくまでもコメディータッチ。それもベタ甘のラブコメ。笠原郁・一等図書士と堂上篤・二等図書正のやきもきさせる関係。イジイジ度最高潮にして、一気に新たな展開を見せそうな予感を感じさせたところでシリーズ第3弾『図書館危機』につづく。
読了日:03月21日 著者:有川 浩

 


阪急電車阪急電車
物語のはじまりは「電車の中での恋のはじまり」。おぉ、流石は有川浩さん、たっぷり心を温めてもらおうと思った矢先に、次の場面では結婚を目前にして婚約相手に別の女と結婚すると言われた不幸な女が登場。しかも、その相手は友達だったというきつい話。どうなるんだこれは? 名も知らない行きずりの人からのひとこと。袖振り合うも多生の縁。それぞれの縁が人生を紡いでいく。ほのぼのしあわせな気分になれるエッセイ風小説でした。
読了日:03月23日 著者:有川 浩

 


マークスの山(上) 講談社文庫マークスの山(上) 講談社文庫
5年ぶりの再読です。再読でも理解するのが大変です。上巻終わり頃になってやっとテンポが出てきます。高村さんの文章は精神力が充実していないと読めん。(^^;)
読了日:03月28日 著者:高村 薫

 

 


マークスの山(下) 講談社文庫マークスの山(下) 講談社文庫
再読だけになんとか読めたが・・・。理解は深まったものの新たな疑問も発生。困った小説です。でも、3回目の再読はない。私ももう歳ですから・・・
読了日:03月28日 著者:高村 薫

 

 


算法少女 (ちくま学芸文庫)算法少女 (ちくま学芸文庫)
児童文学ながら大人が読んでもおもしろい。それだけでなく、物語を読むうちに算法(数学)というもののおもしろさ、奥深さに自然と気づくようにできている。学問は実生活に役立てお金を儲ける助けにもなるが、それはあくまでも付帯的結果である。人間は本来、真理を追い求め、少しでもそれに迫りたいと希求する存在である。人は常に真理に飢え学問を修める。その一番根源的な姿がこの本に描かれている。つまり、知的好奇心を満たすことは「この世とは別世界のような楽しみを持つこと」すなわち「壺中の天」(こちゅうのてん)なのだと。
読了日:04月02日 著者:遠藤 寛子

 


イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)
白鳥圭輔が上巻から登場。しかも早い段階で。これは面白いわなぁ。一気に読み終え下巻に突入!
読了日:04月06日 著者:海堂 尊

 

 


イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)
この国の国民はいつから医者に敬意を払わなくなったのか。人に敬意を払わず、非難するばかり。困難な症例でも治療に失敗すれば訴えられる危険性。お医者さんもやってられんでしょうね。少しは敬いましょうよ、感謝しましょうよ。
読了日:04月10日 著者:海堂 尊

 


食堂かたつむり (ポプラ文庫)食堂かたつむり (ポプラ文庫)
物語に流れているある種の「優しさ」。それは誰かのために料理を作るという行為が人との繋がりを希求しているからだろう。そして逆にそうして作られた料理をいただくということによる癒しがそこにあるからだろう。この小説を読むとゴールデンウィークは家にいて、スープをコトコト煮込みながらぼうっとしてみようかなんて気になります。あぁ・・・「ラプサンスーチョン」が飲みたい。「ザクロカレー」を食べたい。雪原にに咲く「スノードロップ」が観たい。そしてなにより「ジュテームスープ」を飲んでみたい。
読了日:04月16日 著者:小川糸

 


吉田自転車 (講談社文庫)吉田自転車 (講談社文庫)
ギャグマンガで人気の吉田戦車氏の自転車に関係したエッセイ集。自転車に乗ってうまい蕎麦屋に行く。蕎麦屋では酒を飲む。正しい中年自転車乗りの姿です。法律的には多少問題ありかも知れませんが・・・・。
読了日:04月29日 著者:吉田戦車

 


武士道シックスティーン (文春文庫)武士道シックスティーン (文春文庫)
剣道を高校の体育の授業でかじっただけの私にも面白く読めました。まさに一気読みです。主人公の二人(映画では成海璃子さん、北乃きいさん)の魅力の為せる技でしょう。未完成の人格。理屈抜きのエネルギーの奔流。迷い、そして自信喪失。誰もが通り過ぎてきた青春。それを50歳を迎えた私も思い出し、共感し、知らず知らず主人公にエールを送っていました。
読了日:04月29日 著者:誉田 哲也

 


お腹召しませ (中公文庫)お腹召しませ (中公文庫)
『五郎治殿御始末』につづく幕末もの短編集。さすが浅田氏は短編の名手、どれも素晴らしい。しみじみとした悲哀を感じるが、浅田氏お得意の「泣かせ」はない。泣ける話も入れてほしかったな。
読了日:05月07日 著者:浅田 次郎

 


想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
「雲外蒼天」の相と占われた主人公の澪と、「旭日昇天」の相と占われた高麗橋にある大店のこいさん野江。大坂で生まれ仲良しだった二人はひとたびは離ればなれになったが、数奇な運命は江戸でふたたび交差する。女であるがゆえに正当に評価されることのない時代に料理人を志し、懸命に働く澪に降りかかる艱難辛苦。自らの努力と創意でその苦難を乗り切る。そしてそこには澪を温かく見守る周りの人々の人情があった。物語を読み進めるにつれ澪の活躍に拍手喝采し、下町の人情に心温まり目頭を熱くします。
読了日:05月12日 著者:高田 郁

 


朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
ひとたび事件が起これば家庭を顧みず捜査に没頭する警視庁強行犯係・係長(ハンチョウ)樋口顕。そんな夫に愚痴ひとつ言わず内助の功で支える妻・恵子。結婚して日常を重ねていくうちにいつの間にか二人の関係は男と女から夫と妻、家族へと一見冷めた関係になっている。果たしてそれで良いのかと。しかしやはり私は日本人、しかも旧人類である。「公(仕事)」と「私(家庭)」があれば、公を優先するのが当然だと感じるし、それが美徳だとも考えている。そして、そのような考えの私にとって主人公の妻・恵子さんは実に魅力的なのだなあ、これが。
読了日:05月17日 著者:今野 敏

 


リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
主人公の樋口顕は決してヒーロータイプではありません。ワーカホリックぎみな中年男、妻を愛しているが多くの日本人家庭と同じく愛情表現は控えめ、というより愛情表現は皆無に等しい。一人娘を愛しているが娘が自分をどう見ているか気になる40歳。仕事上も上司や部下の自分に対する評価がどうなのかが気になり、ときどきそんなことをうじうじ気にしている自分がイヤになる。そんな強行犯係係長(ハンチョウ)樋口顕が普通にカッコイイ!
読了日:05月20日 著者:今野 敏

 


ソウルケイジ (光文社文庫)ソウルケイジ (光文社文庫)
430Pたらずの小説だが、200P近くまで読むと大方のからくりが読めてしまう。その想定は概ね当たっていた。だからといって本書がつまらない小説だというわけではない。謎が解けてしまってはミステリとしての楽しみは半減するかもしれないが、この物語にはそれを補ってあまりある人間像がある。読者はそれぞれの登場人物の心情に共感しながら応援する。読者は想定したシナリオがはたしてそのとおりであったことを確認しながら読み進め、そうあって欲しかった結末を見て救われる。
読了日:05月20日 著者:誉田 哲也

 


借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)
このシリーズなかなか良いです。リストラ請負人といういけ好かない仕事を生業にしている主人公・真介によこしまな思いはないし、相手を蔑むようなことは決してしない。一方、リストラ対象となる社員もまた決して使えない人間ではない。その証拠に彼(彼女)たちは決して会社にぶら下がってはいない。首を切られるかもしれない状況にあっても、他のせいにしない。つまり一人の人間として自立し、逆境にあってなお、毅然としているのだ。垣根氏は読者に対しこう言いたいのではないか。「矜持を持て。大切なのは生きることではなく、生き方なのだ」と。
読了日:05月23日 著者:垣根 涼介

 


天平の甍 (新潮文庫)天平の甍 (新潮文庫)
小説としてもっと劇的に描くことも可能だったはずだが、井上氏はあえて恬淡とした筆致で描いている。そこに井上氏のどのような意図があるのかは計り知れないが、そのような描き方をすることでそれぞれの留学僧の生き方について読者自身が自らの視点で思いを馳せることが出来るのではないかと思う。そして海の藻屑と消えた数々の無名の留学生を想うとき、歴史とは「才能の屍の積み重ね」なのだと改めて想う。
読了日:05月25日 著者:井上 靖

 


シアター! (メディアワークス文庫)シアター! (メディアワークス文庫)
有川氏の小説を読んでいていつも感じることは、小説の奥底にある氏の想いは気高くしかも深いものがあるにもかかわらず、あくまで小説としては軽く読みやすいものに仕上げているのではないかということ。そして文学性よりも読者を楽しませることを優先しているのではないかということ。読者を自分の作品世界に引き込み、楽しませ、充分に満足させること、それがプロの小説家なのだと有川氏は言っているような気がする。
読了日:05月28日 著者:有川 浩

 


面白南極料理人 (新潮文庫)面白南極料理人 (新潮文庫)
もっとも寒さが厳しい季節でー80℃の南極ドーム基地。そりゃあウィルスだって生存できないでしょう。こんな所に一年もじっとしていろ、日本に帰ってはならん(というか日本に帰る手だてはない)といわれれば、美味いものを食い酒を飲むしか楽しみは無いだろう。極寒の地での作業と宴会の日々。極限状態の中で助け合って生きる8人のオッサンたち、その絆はハンパではない。それ故に彼らが夜な夜な催す宴会はただの飲み会にあらず、神々しいまでに崇高な儀式と化す。
読了日:06月01日 著者:西村 淳

 


鹿男あをによし (幻冬舎文庫)鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
鴨川ホルモー』もそうであったが、いかにもありそうでなさそう、なさそうでありそうな話です。でもやっぱりないよなあ。しかしあって欲しいなあという話なのです。どちらも読んでいない方にはさっぱり判りませんよね、スミマセン。読後感爽やか、なんとなく元気になっているような小説です。読者を意識して、読者を楽しませるためにきちんと作られた小説。万城目氏の頭の良さに脱帽です。
読了日:06月03日 著者:万城目 学