佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『三匹のおっさん』(有川浩・著/文春文庫)

「よっ……くもうちウチの娘を……」

 怒り心頭に発した則夫の声に、男があからさまに侮る顔になった。

 そして男が地を蹴った。標的は則夫だ。組むまでもなくタックルで突破できると踏んでか、肩を前にした姿勢で突っ込む。

 接触の寸前、則夫の上着が例によって翻った。

「則夫・エレクトリカルパレーーーーードッ!」

 バシッと電流の弾ける光りが青く躍った。しかも――則夫が男に叩き込んだのは両手だ。

 男はそれこそひとたまりもなかった。突っ込んできたままの勢いで地面に突っ込んだ。

「成敗ッ!」

「おま……殺してねえだろな」

                                         (本書P134より)

 

 

三匹のおっさん (文春文庫)

三匹のおっさん (文春文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

『三匹のおっさん』(有川浩・著/文春文庫)を読みました。

 

まずは裏表紙の紹介文を引きます。


 

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。

紹介・児玉清、解説・中江有里


 

 

おもしろいっ! おもしろすぎますよ。 楽しく読めて痛快な本を紹介して下さいとお願いされたら真っ先にこの本をお薦めするでしょう。アラ還ものとしては重松清氏の『定年ゴジラ』と双璧。これはもう、若者から中年から老年、男であれ女であれ、レディーだろうがオバサンだろうがオバンだろうが、オジンだろうがオッサンだろうがおじさまだろうがにーちゃんだろうが、老若男女だれにでも愛される小説だ。

 

特にお薦めは第3話。ちょっと泣かせます。私はこれを通勤のバスの中で読んだのですが、思わぬところでこみ上げる涙を抑えるのに苦労しました。そして「こ、これは反則やぁ~。ヒーー」と悲鳴を上げたのは第2話P144のカット(エレクトリカル・パレード発動1秒前)です。笑いを堪えるのに死にそうになりました。

 

「あとがき」+「文庫本あとがき」+「特別収録・ラジオビタミン・児玉清の読み出したら止まらない 書き起こし」+「中江有里さんの解説・愛すべきおっさん。」というサービス四段ロケットで私は昇天しました。文春文庫万歳!!

 

本書文庫化と同時期に続編『三匹のおっさん ふたたび』が刊行された由。読者として嬉しい限りだが、文藝春秋社様におかれては早急に文庫化を検討されたい。商売上は単行本が売れる期間を充分とってからが常道と承知しておりますが、文庫化があまりに遅れますとおっさん萌え菌に冒された読者から抗議の焼き討ちにあうかもしれませぬ故。有川騒動などという事件を歴史に残してはなりませぬぞ。何卒、文庫派にお慈悲を。

 

野生時代」2009年8月号をamazonで発注。なんと『三匹のおっさん』のスピンアウトにして『植物図鑑』のスピンアウトでもあるという短編が掲載されているという。おそらく有川菌に冒された者にとってエレクトリカル・パレード級リーサル・ウェポンに違いない。