佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

4月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2365ページ
ナイス数:2173ナイス

 

4月になって自転車通勤を復活。バスの中での読書タイムが減るので読む量が減り気味。北村薫さんの「日常のミステリ」にのめり込みました。〈円紫さんと私〉シリーズ、読み切ってしまって、ちょっとした喪失感。



三匹のおっさん (文春文庫)三匹のおっさん (文春文庫)
おもしろいっ! アラ還ものとしては重松清氏の『定年ゴジラ』と双璧でしょう。これはもう、若者から中年から老年、男であれ女であれ、レディーだろうがオバサンだろうがオバンだろうが、オジンだろうがオッサンだろうがおじさまだろうがにーちゃんだろうが、老若男女だれにでも愛される小説だ。「あとがき」+「文庫本あとがき」+「特別収録・ラジオビタミン・児玉清の読み出したら止まらない 書き起こし」+「中江有里さんの解説・愛すべきおっさん。」というサービス四段ロケットで私は昇天しました。文春文庫万歳!!
読了日:04月03日 著者:有川 浩

 


野分一過―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)野分一過―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)
小説を読み切った翌朝、今日は何を読むかと本棚を眺めるのを常としている。『野分一過』は夏過ぎ台風シーズンに読もうと思っていたのだが、昨日4月3日は記録的な春の嵐。すぅっと手が伸びた。風速40mの突風と雨が吹き荒れる中、臨場感たっぷりに読みました。前巻『杜若艶姿』では想いを寄する人おりょう様と結ばれ、「眼千両」「杜若半四郎」と称せられる岩井半四郎率いる市村座の興業におりょう様をエスコートした小籐次。今巻、小籐次はあくまで分をわきまえた振る舞いながらも、おりょう様は積極的。小籐次よ、この、このっ、幸せ者め!
読了日:04月04日 著者:佐伯 泰英

 


空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
何気ない日常が、そこに潜む謎によって色合いを与えられる。人が死なないミステリは良い。誰にでもありそうな日常だけに、かえってリアリティーがあるからだ。ミステリとして秀逸なのは「赤頭巾」。たまたま歯医者の待合室で隣り合わせたおばさんとの会話で、子供の頃からほのかなあこがれを抱いていた女性の秘密と意外な一面があぶり出される。表題作「空飛ぶ馬」は温かみがあってすばらしい作品だ。クリスマスにもう一度読み返すのもよいだろう。クリスマスに「空飛ぶ馬」を読み、大晦日には落語「芝浜」を聴く。心温まる年の瀬になるに違いない。
読了日:04月10日 著者:北村 薫

 


春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)
岡潔氏は数学と美術を同じものだという。同時に数学において大切なのは情緒なのだとも。これはまったく逆説的であって、我々はそれをにわかには理解できない。しかし「数学をやって何になるのか」という問いに対する氏の答えを聞いたとき、それがすうっと腑に落ち真実に違いないと判るのだ。曰く「私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。咲いているのといないのではおのずから違うというだけのことである」
読了日:04月12日 著者:岡 潔

 


傍聞き (双葉文庫)傍聞き (双葉文庫)
長岡弘樹氏は「STORY BOX」連載の『初任』を読んで注目していた作家。表題作『傍聞き』も素晴らしかったが、私のお気に入りは『迷い箱』です。どちらのお話も謎解きの楽しみと驚きだけでなく、その謎に人情がにじみ出ています。単なる謎解きゲームではなく、謎解きの先に人間が見えてくるといえばいいのでしょうか。ミステリー小説はこうでなくてはいけません。ブラボー!!
読了日:04月12日 著者:長岡 弘樹

 


夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
信号待ちの寸暇を惜しんで本を読む父、二人の娘は美人姉妹だ。姉はちょっと怖いぐらい圧倒的な美人。妹は派手さはないものの、いくぶん少女の面影を残した美人。そんな姉妹は何となくぎくしゃくしている。子供の頃の父の愛情をめぐるお互いの「嫉妬」に端を発している。表題作『夜の蝉』はそんな姉妹の心情と、姉の恋愛にからむ嫉妬がテーマ。そして『六月の花嫁』は「はじらい」がテーマではないでしょうか。「何をどれぐらい表にし裏にするかは人によって違う。その割合こそがその人らしさを作るのでしょう」という円紫さんの言葉に肯きました。
読了日:04月16日 著者:北村 薫

 


秋の花 (創元推理文庫)秋の花 (創元推理文庫)
「小説が書かれ読まれるのは、人生がただ一度しかないことへの抗議からだ」とは作中、円紫師匠の言葉。そう、人生はただ一度しかない。そして人はただ一度しかない人生で天寿を全うできるとは限らない。神の悪意を感じるほどの悲運もあり得る。悪意のかけらもない人の行動が引き起こす過酷な運命。この世に神はいない。しかし人の心の中には菩薩が住む。そこに救いがある。円紫師匠は酸いも甘いも噛み分けた大人だ。難解な謎を解く明晰な頭脳だけでなく、人の心を思いやる優しさがある。このシリーズが再々の読み直しにも耐えうる所以である。
読了日:04月20日 著者:北村 薫

 


朝霧 (創元推理文庫)朝霧 (創元推理文庫)
主人公〈私〉も社会人になっちゃったのか。なぜかこの娘が大人になっていくのが切ない。娘の成長を見守る父の気分になってしまっている。成長を応援したい。恋もして欲しい。しかし、それを思うとちょっと切ないのが親父の気持ちだ。今作は「恋」がテーマ。もし、次作が上梓されるならば、主人公の恋の行方が描かれるのだろう。読みたい気持ちと読みたくない気持ちが相半ばしてせめぎ合っている。いつか〈私〉が「虎」を指さしたくなるほどの恋をするのかも知れないと思うと、胸が張り裂けそうになる。親父の気持ちは切なく複雑だ。
読了日:04月28日 著者:北村 薫