佐々陽太朗の日記

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『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン:著/大友香奈子:訳/創元推理文庫)

昨日ほど遠い場所などありはしない。

                   (本書P174「それゆえに愛は戻る」より)

 

ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン:著/大友香奈子:訳/創元推理文庫)を読みました。

 

 

ジェニーの肖像 (創元推理文庫)

ジェニーの肖像 (創元推理文庫)

 

 

 

まずは裏表紙の紹介文を引きます。


 

1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。妻を亡くした童話作家とその子供たちの、海の精霊のような女性との交流を描く『それゆえに愛は戻る』を併録。


 

先日読んだ恩田陸さんの小説『ライオンハート』は『ジェニーの肖像』へのオマージュとして書かれたと知り、ぜひ読みたいと思いました。『ジェニーの肖像』は若い画家、『それゆえに愛は戻る』は若い童話作家が主人公です。どちらも主人公が謎の女性を想う切ないまでのリリシズムに溢れた作品でした。大切なものであればあるほど、それが壊れてしまったり、失ってしまうことに対する怖れが心の片隅に芽生える。幸せの刹那であってさえ、心は喪失の予感につつまれる。いや、喪失の予感につつまれているからこそ、幸せの刹那は儚くもその輝きを増すのでしょう。素晴らしい小説に出会いました。私の大切な一冊になりました。

 

ライオンハート』、『ジェニーの肖像』と時空を超えた恋をテーマとした本を読んだのだが、もう一つロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』が読みたい。絶版本だけに手に入れるのが難しいかもしれないが、いつかきっとめぐり逢えると信じている。