佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『時の娘』(ジャック・フィニイ,ロバート・F・ヤング,他:著/創元SF文庫)

 恋愛には障害がつきものだ。たとえば距離。長距離恋愛が往々にして破局を迎えるのは、思った以上に障害が大きいからだろう。

 しかし、愛が深ければ、距離という障害は克服できる。ならば、障害が時間だったら?

                         (本書P10より引用)

 

『時の娘』(ジャック・フィニイ,ロバート・F・ヤング,他:著/創元SF文庫)を読みました。

このところ数ヶ月、ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』が読みたいと念願しておりますが、絶版ゆえ未だ読めず。満たされぬ気持ちを埋めるべく『ライオンハート』(恩田陸:著)、『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン:著)、そして本書とロマンティックSFを追求中です。

 

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


時という、越えることのできない絶対的な壁。これに挑むことを夢見てタイム・トラヴェルというアイデアが現れて一世紀以上が過ぎた。時間SFはことのほかロマンスと相性がよく傑作秀作が数多く生まれている。本集にはこのジャンルの定番作家といえるフィニイ、ヤングらの心温まる恋の物語から作品の仕掛けに技巧を凝らした傑作まで名手たちの9編を収録。本邦初訳作3編を含む。


 

 

 

談志師匠の落語に『二階ぞめき』というのがあります。ある大店の若旦那のために屋敷の二階に吉原を造ってしまう噺。夜な夜な吉原をひやかしに行く若旦那に困り果てた末に、それなら二階に吉原を造って差し上げますので吉原通いをやめてくださいというのです。若旦那が番頭さんに訊きます。「二階に吉原なんて造れるの?」 番頭さん答えて「造れるでしょう、ああた、そりゃあ、落語なんですから」 ―――― 本書にはSF仕立てのロマンティックな短編が九編収められています。時間が障害となる恋が成就するハッピーエンドにハートがきゅんきゅんします。恋が時空を超えられるの? という疑問も何のその。ある意味何でもありです。それはもうすごいことになっています。だってSFなんですから(笑) それだけに作者のこうあってほしいという思いがストレートに伝わってくるステキなお話です。ロバート・F・ヤングの『時が新しかったころ』の甘さに悶絶。フィニイの『台詞指導』もなかなかステキな結末です。