佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4010ページ
ナイス数:2323ナイス

 

先月は終盤になって仕方なく小説以外の本を数冊読んだ。その間、小説を読めず苦しい思いをした。今、文庫本を鞄に入れて持ち歩き、小説を読める幸せをかみしめている。

先月も多くの収穫があった。米澤穂信氏の<古典部>シリーズ最新刊『ふたりの距離の概算』がなかなか良かった。これは<小市民>シリーズも読まねばなるまいと『春期限定いちごタルト事件』、『夏期限定トロピカルパフェ事件』、『秋期限定栗きんとん事件』も購入し積読本になっている。三浦しをん氏の『仏果を得ず』は文句なしのおもしろさ。「文楽」にも興味がわいてきた。『天地明察』は評判どおりのおもしろさだった。映画化されるだけのことはある。コミック『へうげもの』もおもしろい。既刊本すべて大人買いしてしまった。大人買いと言えばマイクル・Z・リューインの<探偵アルバート・サムスン>シリーズにも出会ってしまい続編を一括購入。これも積読本となっている。積読本がどーんと増えてしまった。早く読まねばと苦しいが嬉しい。本の海は果てしなく広く、人生はあまりに短い。

最後に読んだ『時の娘』は私の宝物になった。



ふたりの距離の概算 (角川文庫)ふたりの距離の概算 (角川文庫)
思い起こせばはじめて米澤さんのミステリに出会ったのは『シャルロットだけはぼくのもの』だった。読み終えてしばらくポカンとしていた。そしてその後、なぜかニヤニヤして、おもむろにもう一度出だしから読み直したものだ。人の死なない日常ミステリというものの面白さにはまった瞬間だった。<古典部>シリーズも第5弾となり、青春小説としての面白みも増してきた。『ふたりの距離の概算』とはなんとも思わせぶりな題名ではないか。そしてこのシリーズの良いところは恋愛的要素を微かに漂わせながら、あくまでミステリにこだわっているところだ。
読了日:08月07日 著者:米澤 穂信


仏果を得ず (双葉文庫)仏果を得ず (双葉文庫)
一流のものだけが一流を知る。一つのものを至上と思い定めて他のものは失っても仕方なしと覚悟する。そうしなければ到達できないほどの高み。それほどの高みがあることを知るのは、その高みに至る途上にあってなお上をめざす者だけなのだ。子供は自分の限界を知らない。いずれは死ぬ運命にあることを今は意識していない。しかし、大人は、それも道を究めようとする者ならばなおさら己の限界を知っている。残された時間があまりに短いことも。本当に富士山に登ろうと決めた者だけが富士の頂に立つことが出来る。散歩のついでに登った者はいない。
読了日:08月09日 著者:三浦 しをん


天地明察(上) (角川文庫)天地明察(上) (角川文庫)
英雄は英雄を知る。類い希なる知性の持ち主が比類無き知性の持ち主に出会ったとき、お互い何も語らずとも不思議な親和性がうまれる。と同時に、相手に対するリスペクトとジェラシーが綯い交ぜになった感情に戸惑う。相手の圧倒的な才能を観てしまったときに己の中に生じるある種の絶望に身を焦がす。そんな気持になりながらも、人はなお最高の知性に触れることを希求する。人は老いさらばえていつかは死ぬ。しかし、比類無き知性による啓示はいつまでも輝きを失うことはない。それどころか後世に反って輝きを増し伝説となる。 
読了日:08月11日 著者:冲方 丁


天地明察(下) (角川文庫)天地明察(下) (角川文庫)
”燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや” 渋川春海関孝和という天才にとって、天の定石が明らかであるにもかかわらず、世がその秩序に従っていない状態というのは居心地が悪かったに違いない。天の定石を知る者に世を治める権力無く、世を治める権力ある者に天賦の才無し。そのことに絶望せず、天の定石をあまねく広めたいという志を貫いた執念に拍手を送りたい。そのうえ、渋川春海という人の素晴らしいのは「嫁を大事にする」ところだ。理知の世界に生きながら情に背かない男。男として斯くありたいという姿がここにある。なんと清々しいことか。
読了日:08月13日 著者:冲方 丁


A型の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)A型の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
どうして今日まで読んでいなかったのかと悔やむ。主人公アルバート・サムスンは女性に優しい紳士だ。酒もタバコもやらず、銃を持たない探偵。過去の記録を丹念にあたり、聞き取り調査を積み重ねるという真面目な探偵ぶり。たまに不法侵入を試みるのはご愛嬌。マッチョであろうと無理をすることなく、あくまで知的に調査をすすめる姿に好感。己の弱さや欲に負けることを潔しとせず、矜持を胸に気高く生きる姿にハードボイルドの原点を見る思いだ。死体を発見しないミステリ。グロテスクであったり、暴力的な場面が登場しないところにセンスを感じる。
読了日:08月18日 著者:マイクル・Z. リューイン


へうげもの 一服 (講談社文庫)へうげもの 一服 (講談社文庫)
半年ほど前、『利休にたずねよ』(山本兼一・著)を読んで以来、古田織部という数寄者に興味を持っていた。「剽げる」とは新明解国語辞典(第四版)によると「気軽に、こっけいなことを言ったり、したりして見せる」とある。この世には二通りのものがある。美しいものとそうでないものだ。人の価値観、美意識はさまざまだ。しかし、だからといって「美しいもの」の存在を否定することは出来ない。美しいものは確かにそこにある。そのものの持つ何が人をして美しいと感じさせるのか、それを見極めたいと思った男たちの織り成す人間絵巻に心躍る。
読了日:08月18日 著者:山田 芳裕


へうげもの 二服 (講談社文庫)へうげもの 二服 (講談社文庫)
本能寺の変、秀吉陰謀説ですか。いや実行犯説? 斬新です。しかし、そのような秀吉像であればこそ、これからの秀吉と利休とのからみが面白そうだ。利休はどうして秀吉から死を賜ったのか。そして、古田織部はそれをどのようにとらえ、どのように振る舞うのか。秀吉と織部の関係がどう描かれるのかが楽しみ。
読了日:08月21日 著者:山田 芳裕


対談 世流に逆らう―佐伯快勝×アレックス・カー対談 世流に逆らう―佐伯快勝×アレックス・カー
今朝のNHK・BSプレミアムの番組『新日本風土記 - 祖谷 大歩危』にアレックス・カー氏が出演。祖谷で茅葺き屋根の古民家を再生していらっしゃった。番組の中で氏は「過疎は時代の流れ。この流れは止められない。だったら出ていった人の後に新しい人が入ってくればいい。観光によって風景・文化・人間関係を取り戻す」といったようなことを語っていた。日本人が古来より育んできた美意識、価値観にもう一度気づき取り戻すための一つの方法として観光を考え、自然や歴史、文化を資源として継承していく。それも「世流に逆らう」ということか。
読了日:08月25日 著者:佐伯 快勝,アレックス カー


地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)
地域活性化だとか、商店街復活などといった大義名分は誰もが否定しにくい。しかしだからといって支援しても結果がついてこない場合が多いのではないか。結局は税金と労力の無駄遣いになってしまう。しかし、そのような結果であっても、成功事例として喧伝されているものも多いという。著者・久繁哲之介氏の視点は鋭く、考察は深いとみた。それにしても、なぜ私がこのような本を読んでいるのか。それは秘密です。といっても、たいした理由はないというだけのことです。ただ一言、「別に好きこのんで読んだわけではない」とだけ言っておこう。
読了日:08月26日 著者:久繁 哲之介


自治体をどう変えるか (ちくま新書)自治体をどう変えるか (ちくま新書)
基本的に公共の仕事の中で「民間」が対応できないものを「官」が担う。「民」を補完するのが「官」だという考えが貫かれている。現状の行財政をみていると肥大化してしまったガバメントが将来にわたって持ちこたえられるはずはなく、この発想に全く同意する。しかし、つまらない。それにしても、なぜ私がこのような本を読んでいるのか。それは秘密です。読みたい小説は山のように積んであるのだ。別に好きこのんで読んだわけではない。嫌なことはさっさと片付けて、小説世界に逃げ込みたいぞ!
読了日:08月26日 著者:佐々木 信夫


市民版 行政改革―日本型システムを変える (岩波新書)市民版 行政改革―日本型システムを変える (岩波新書)
おもしろくない。おもしろさを期待していたわけではない。そんなことは題名をみれば判っていたことなのだ。おまけに岩波新書なのだ。小説読みの私におもしろうはずがないではないか。読むに至ったのにはやむにやまれぬ大人の事情というものがあるのだ。嫌なことは避けていても消えてなくなってはくれない。はやく片付けるしかないのだ。あぁ、小説読みたい。
読了日:08月26日 著者:五十嵐 敬喜,小川 明雄


自治体改革の突破口―生き残るための処方箋自治体改革の突破口―生き残るための処方箋
まさに自治体改革待ったなし。とは判ってはいても、なかなか変わらない、変われない。危機意識を持っているのはごく一部。もはや強力なリーダーシップを期待するしかないのか。橋下さん、がんばってちょーだい。あー、それにしても、こんな本さっさと放り出して血湧き肉躍る小説本が読みたい。読みたい。読みたい。読みたい・・・
読了日:08月26日 著者:上山 信一


現代行政と行政改革―改革の要点と運用の実際現代行政と行政改革―改革の要点と運用の実際
すみません。「読んだ」というのは嘘です。「斜め読み」といっても言い過ぎです。せいぜい「ざーっと眺めた」というところ。と、そんなことをバカ正直にいう必要もないのですが、この御本は真面目に書かれています。ですから、私も嘘を言ってはいけないという気分になるのです。背筋がピシッと伸びるのです。だからといって、とてもじゃないけどきちんと読む気にはなりません。食前の酒が入ってしまってはなおさらです。すみません。それにしても、この装丁はどういうことなのでしょう。なぜ、クロアゲハ?が・・・。謎です。そちらが気になります。
読了日:08月26日 著者:東田 親司


時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)
談志師匠の落語に『二階ぞめき』というのがある。ある大店の若旦那のために屋敷の二階に吉原を造ってしまう噺。若旦那が番頭さんに訊きます。「二階に吉原なんて造れるの?」 番頭さん答えて「造れるでしょうそりゃあ、落語なんですから」――本書にはSF仕立てのロマンティックな短編が九編収められています。ある意味何でもありです。それはもうすごいことになっています。だってSFなんですから(笑) それだけに作者のこうあってほしいという思いが伝わってくるステキなお話です。ロバート・F・ヤングの『時が新しかったころ』の甘さに悶絶
読了日:08月30日 著者:R・F・ヤング他,ジャック・フィニイ

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
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