佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

ぼくのメジャースプーン

 ぼくのお母さんは、ふみちゃんを見て、よくこう言う。

 みんなより、ほんのちょっと早くおとなになっちゃってるのよね。かわいそうに、あんた早く追いついてあげたら? と。

                                     (本書P31より)

 

 

『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月・著/講談社文庫)を読みました。

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。



 辻村深月氏の小説を読むのは初めてです。読書メーターで某氏に薦められたのですが、この小説に出会うきっかけをくださったことに心から感謝します。

 復讐の本質は何か。自分あるいは自分の大切な人が受けた理不尽な仕打ちに対し人は復讐する権利を有するのか。何を願って復讐するのか。そして復讐によってその願いは適えられるのか。復讐する者の持つべき覚悟と責任。復讐の報い。罪の報い。命の軽重。愛とは何か。人間の本質は何か。あらゆることを考えさせられました。

 少年を主人公としたジュブナイルと先入観を持って読み進めたのですが、平易な文章なのに読むのに思いのほか時間がかかりました。物語の中盤で「ぼく」と「先生」が罪と罰、復讐とその報い、力を持つことと力を行使することの責任云々について会話する場面がつづく。その一言一言に深遠な哲学があり、立ち止まって考え込むことになることがしばしばであった。これは深い。