佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

蘇るスナイパー

「地獄へ行きやがれ」ラットは言った。

「そうなるのはまちがいないが」ラットの耳に返事が届く。「行くのはおまえが先だ」

                           (本書上巻P403より)

 

『蘇るスナイパー 上・下』(スティーヴン・ハンター・著:公手成幸・訳/扶桑社ミステリー)を読みました。久しぶりの<ボブ・リー・スワガー>シリーズです。シリーズ第六弾にして再びボブ・リーらしさが復活。

 

 

出版社の紹介文を引きます。


(上巻) 4件の狙撃事件が発生した。まずニューヨーク郊外で映画女優が心臓を射抜かれて即死。続いてシカゴの住宅街で大学教授夫妻が頭部を撃たれて死亡。クリーヴランドではコメディアンが口を射抜かれて絶命する。使用ライフル弾はどれも同種と判明し、捜査線上にヴェトナム戦争の最優秀狙撃手が浮上するが、彼もまたライフル銃での自殺と推定される状況で発見される。事件は落着かに見えたが、FBI特捜班主任ニック・メンフィスはこれに納得せず、親友のボブ・リー・スワガーに現場検証を依頼した。「ボブ・リー・スワガー」シリーズ第6弾。


 

(下巻) ニューヨーク・タイムズを初め各メディアは連続狙撃犯の正体は自殺したヴェトナム戦争の名狙撃手だと報道したが、ボブは敢然と異を唱える。最大の理由は異常なまでに正確な狙撃精度だった。被疑者が持っていた旧式のスコープで、ここまでの精密射撃は不可能だった。それを可能にするのは超小型コンピュータ内蔵のハイテク・スコープ“iSniper”だけ…。ボブはその製造販売会社の実地講習会に潜入することを決意する。スナイパーの精髄を描破したシリーズ空前の傑作。


 

 

 うまいっ! さすがはハンター氏。上巻では戦争の英雄が濡れ衣をきせられ、それを仕組んだ強大な権力を持つ悪の存在をほのめかし、その悪に迫るいとぐちをつかみかけた時、関係する者が虫けらの如く抹殺されるという筋書き。もう読者は怒りのボルテージ最高潮にして、ボブ・リーが悪人を地獄に突き落としてくれることを心から望むに誓いないのだ。下巻でボブ・リーが悪人を狩り出すともう止まらない。類い希な狙撃手としてのボブ・リーを心から待ちわびていたのだから。シリーズ第一作『極大射程』に比肩するおもしろさ。ページをめくる手が止まりませんでした。大満足です。