佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

だいじょうぶ3組

「私の夢は、いつまでもお父さんとお母さんとお姉ちゃんとわたしの四人で楽しく暮らすこと。そのためにも、しっかり勉強して、たくさんお金をかせげるような仕事につきたいです。あと、本を読むのが好きだから、ほんとうはちょっと小説を書いてみたい気もします。でも、やっぱりムリかな。 中西文乃

 

                         (本書P313・エピローグより)

 

『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡・著/講談社文庫)を読みました。

 

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


松浦西小学校に5年3組の担任としてやってきたのは、手と足がない先生、赤尾慎之介。「フツーって何だろう」「一番を目指す意味って?」―個性豊かな28人の子どもたちと赤尾先生は、幾つもの“事件”を通して、大切なことに気づいていく。三年間の教員生活から生まれた著者初の小説。


 

 

 私が参加している月一回の読書会「四金会」の今月のテーマ小説。そうでなければ、まず読まなかったでしょう。この手の話、なんとなく照れくさくてついつい敬遠してしまいます。

 やはり想像したとおりの内容でした。だからといってつまらなかったわけではない。読んでいて二度ばかり目頭を熱くした。知ってはいたが乙武さんはやはり凄い。前向きである。気をつけたいのは乙武さんが障害者のスタンダードではないこと。それどころか、その積極性と屈託の無さは健常者をもしのぐ。乙武さんを基準に障害を考えたり、他者に乙武さんのように行動することを求めたりすることにはいささか無理があるのではなかろうか。

 口幅ったいようですが少々異論を唱えさせていただくなら、なにも手足を無くされてまで高尾山に登る必要はありません。プールに飛び込む必要も。障害者とそうでない人の壁を突き抜けよう、取り払おうとする強い気持ちはわかりますし、けっしてそのことに反対ではないのですが、やはり出来ることと出来ないことはあって当然だし、それでいいと思うのです。もう一つ、先生が子どもに対して「悩みを解決してあげられなくてゴメンナサイ」と謝ってはいけません。子どもは(それが大人であっても同じなのだが)成長していく中で様々な理不尽な目に遭うのです。かわいそうだがそれを乗り越えるのは当の本人しかありません。周りがそれを解決しようとしてもなんの解決にもなりません。そうした試練を乗り越えて大人になるのです。それを先生が「自分に力がないために・・・」といったメッセージを発すると子どもが勘違いしかねません。ただ、子どもに寄り添ってあげればよいのです。私はそう思います。