佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

4月の読書メーター

2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3905ページ
ナイス数:2576ナイス

虚ろ舟 泣きの銀次参之章 (講談社文庫)虚ろ舟 泣きの銀次参之章 (講談社文庫)感想
『虚ろ舟』がUFOのことだと分かったときは違和感がありました。江戸時代の物語に登場させる必要があるのかと。しかし実際、江戸時代の文献に虚ろ舟は描き残されているらしいと知り了見した。さて、いよいよ泣きの銀次も最終章。心が晴れるハッピーエンドを期待したが、さにあらず。苦い結末となった。捕り物はいくら真剣に調べたところで全てが審らかになるわけではない。世の出来事に科学や論理で説明できないことは多い。人はそうした分からないこと、思い通りにならないことを了見して生きるしかないということか。己の正しいと信じた道を。
読了日:4月25日 著者:宇江佐 真理


卒業 (講談社文庫)卒業 (講談社文庫)感想
東野圭吾氏を少しずつきちんと読んでいこうと思いました。ふとそう思ったのです。東野氏の小説は過去に5作ほど読んでおり、中でも『手紙』『容疑者Xの献身』『さまよう刃』はすばらしい作品でした。東野作品を呼んでいく上で「ガリレオ」と「加賀恭一郎」の二つのシリーズは外せない。そしてシリーズを読む上で順序をばらばらに読むわけにもいかない。まずは加賀恭一郎シリーズから取りかかろうと思う。すでに『嘘をもうひとつだけ』を読んでいるが、第一話『卒業』から始めよう。密室殺人に加え花月札トリックとは・・・いきなり頭を使うなぁ。
読了日:4月23日 著者:東野 圭吾


世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)感想
「神であれ、科学であれ、ひとつのことにしがみついて精神の基盤とすることは、これまで人類が抱えてきた弱さ、幼さであり、これからはそういう人間精神の基盤をも相対化しないといけないのではないか。・・・(中略)・・・どんなものの見方も相対化して考えてごらんなさい。科学もそのうちのひとつの見方として」という著者の言葉には全く同感である。その上で私は「人間は論理が通れば正しいと考えるほどバカである」という著者の指摘にハッとさせられた。アーサー・ケストラーの『機械の中の幽霊』を読むべきだな。ゴーストに会うために。
読了日:4月20日 著者:日高 敏隆


空洞化のウソ――日本企業の「現地化」戦略 (講談社現代新書)空洞化のウソ――日本企業の「現地化」戦略 (講談社現代新書)感想
著者・松島大輔氏は経済産業省入省後、インドやタイなどで日本企業の水先案内人をつとめていらっしゃる。現在のタイ王国政策顧問という立場から、日本企業の海外現地化による空洞化議論のウソをきちんとした根拠を基にわかりやすく解説。新興アジアには今後大きな伸びしろがある。日本企業の海外進出による国内空洞化よりむしろ海外進出しないことによる日本の未来の空洞化(不作為のリスク)こそが問題である。日本は「貿易立国」から「投資立国」として新興アジアを中心とした海外への生産拠点拡大、海外資産拡大を目指すべきだとする意見に納得。
読了日:4月18日 著者:松島 大輔


晩鐘 続・泣きの銀次 (講談社文庫)晩鐘 続・泣きの銀次 (講談社文庫)感想
『泣きの銀次』の続編である。『泣きの銀次』を読んだのは四年前の三月のこと。続編が出ているとはつゆ知らず。最近、完結編『虚ろ舟』が出たのを知って『晩鐘』とあわせて買いました。一度は十手を返した銀次が表勘兵衛に請われて再び十手を手にした。情け深い「泣き」は健在だった。つれ合いと子供を得て生きていく中で、銀次は更に人として深みを増した。完結編『虚ろ舟』を早く読みたい。しかし、これからまずは仕事だ。私も生きて家族を養わねばならない。泣きのウェルズ。(笑)
読了日:4月16日 著者:宇江佐 真理


短編復活 (集英社文庫)短編復活 (集英社文庫)感想
なんと言っても浅田次郎角筈にて」が良い。読むのはこれが三度目だが、やはり泣いた。バスの中だったが泣いた。志水辰夫プレーオフ」は軽妙な作品で意外だった。肩すかしを食らった感じ。東野圭吾「超たぬき理論」も意外。愉快な作品で大笑いした。逆に伊集院静「蛍ぶくろ」、北方謙三「岩」、山本文緒「いるか療法」はそれぞれの持ち味たっぷりだ。綾辻行人「特別料理」は反則技だ。私はこの短編を決して忘れることが出来ないだろう。あああぁあ〃〃おぞましいっ! 他はあえて評さず。
読了日:4月12日 著者:赤川 次郎,浅田 次郎,伊集院 静,北方 謙三,椎名 誠,篠田 節子,清水 義範,志水 辰夫,坂東 眞砂子,東野 圭吾,宮部 みゆき,群 ようこ,山本 文緒,唯川 恵


本日7時居酒屋集合! ナマコのからえばり (ナマコのからえばり) (集英社文庫)本日7時居酒屋集合! ナマコのからえばり (ナマコのからえばり) (集英社文庫)感想
7時というのは椎名氏がアジトとしている新宿の居酒屋で最初の生ビールをグビグビと飲み「プハーッ」と言う時間なのだ。椎名氏は月20本以上の締め切りを抱えているのだ。まさに締め切り地獄なのだ。そのような毎日の中で、締切太郎、締切次郎、締切三郎と目の前の締め切りをやっつけ、居酒屋で「プハーッ」とやることを最大のヨロコビとする人生なのだ。誠にすばらしいのだ。飜って私は今日も大した仕事もせず、通勤バスの中で椎名氏のエッセイを読み、家に着くなり冷蔵庫の缶ビールのプルトップをプシューッと開ける人生なのだ。スマヌ、スマヌ。
読了日:4月9日 著者:椎名 誠


今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
おっと、いきなり時計が十年進んでました。思わず読む順序を間違えたかと思いました。でも、第七作・第八作あたりで物語を紡ぐのに少々苦労していらっしゃるのかなと感じていたのですが、今作では時だけでなく筆がずんずん進んでいる様子に安心しました。登場人物が活き活きとして、読者が嬉しくなる展開を見せてくれる。このシリーズを読み続けて良かったと思う。自作も楽しみ。
読了日:4月8日 著者:宇江佐 真理

 


ナマコのからえばりナマコのからえばり感想
私の大好きな椎名誠氏のエッセイである。どうでも良いことかもしれないが、「私の大好きな」は「椎名誠氏のエッセイ」にかかる。これが「椎名誠氏」にかかるとすれば、多少問題をはらむのである。どうでも良いことを語ってしまった。かつて昭和軽薄体ともてはやされた椎名氏のおバカ・エッセイは健在である。予想どおり、排便・排尿関係の話も出てくる。一見、おバカではあるけれど、椎名氏が世間を見る目は正鵠を射ている。椎名氏は吠える。「若い男たちよ。ズボンをあげろ。お前らのパンツは愚かで汚い」と。まことに同感である。
読了日:4月7日 著者:椎名 誠

 


四季を和える 割烹の和えものの展開四季を和える 割烹の和えものの展開感想
上野さんとはじめて出会ったのは昨年の秋、丹波篠山に山の芋を掘りに行ったときのこと。神戸にあるお店「玄斎」に初めておじゃましたのは先月のこと。カウンターで美味しい御酒をいただきながら、料理を堪能させていただきました。さて、この本ですが和の和え物を季節ごとに写真入り、レシピ付きで紹介して下さっています。もう、見ているだけで涎がでます。とりあえず春の和え物をじっくりと読みました。定番の「たけのこの木の芽和え」はもちろんのこと、「飯蛸と分葱のぬた和え」は自分でも作ってみるつもりです。エンドウ豆が出たら鶯和えもね。
読了日:4月6日 著者:上野 直哉


我、言挙げす―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)我、言挙げす―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
龍之進の少年から青年に成長する過程で、様々な葛藤に立ち向かう心意気が好もしい。その意気や良し。しかし、宇江佐さんは最後に「言挙げ」という概念を持ってきた。言挙げとは「神をも畏れず、己の考えを言い立てること」。言葉には呪力がある。昨今、欧米的価値観からすれば自らの意志は積極的に表明するものだろうが、古来の日本的価値観は自己主張は慎み、神の意志に従って行動するというもの。特に、経験も思索も浅い若輩にあってはそのような心がけも必要だろう。それはおそらく、人の言動は個人を超えて公におよぶからなのだろう。
読了日:4月6日 著者:宇江佐 真理


雨を見たか―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)雨を見たか―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
伊三次とお文の息子・伊与太の鷹揚さと友之進といなみの娘・茜の利かん気がたいそう面白くかわいくもある。友之進の息子・龍之進は見習い同心として奉行所に出仕しはじめた。シリーズが進むにつれて、伊三次のというより、伊三次を取り巻く周りの人の物語になってきている。特に本編では龍之進が大人になっていく課程が描かれている。こうなってくると私はすっかり宇江佐さんの作り出す世界に取り込まれてしまう。そして登場人物の動きに一喜一憂しながら、あぁ髪結い伊三次シリーズに出会えて良かったとしみじみ思うのである。
読了日:4月5日 著者:宇江佐 真理


旅の絵本 (1)旅の絵本 (1)感想
道はどこまでも続く。場面1は北欧の海。安野氏は海と言うより”陸の外れ”という。安野氏らしい淡い色彩の海、そして丘。はじめは小高い丘から見下ろすような構図だが場面2、場面3と進むうちに安野氏の視点は鳥瞰するように変わっていく。道は続く。欧羅巴の山、丘、樹、家、そしてそこに暮らす人々を穏やかな視線で描いていく。道はさらに続く。どこまでも続く。私が安野氏をはじめて知ったのは十数年前のTV番組でのこと。NHK教育で風景画を描いていらっしゃった。番組中、訥々と話をしながら水彩画を描くお姿がとても素敵だった。
読了日:4月3日 著者:安野光雅


君を乗せる舟―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)君を乗せる舟―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)感想
美雨と監物の後日譚がありましたね。読者の期待に応えてくれる宇江佐さんの気持ちがうれしい。祝言そして懐妊。ここまで書けば、仲むつまじい二人を描いた小篇も期待したいところ。続編に期待。本作においては何よりも元服した龍之進に注目。良い若者に育ちました。初恋の女性・あぐりが雪のような花嫁衣装で舟に乗り浅草に向かう。それを見送る龍之進の気持ちがほろにがく胸に迫る。
読了日:4月1日 著者:宇江佐 真理