佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

マドンナ

一人でいる人間を「淋しい」と決めつけるのは間違っている。アローンとロンリーは似て非なるものだ。

                              (本書P298「パティオ」より)

         

『マドンナ』奥田英朗・著/講談社文庫)を読みました。

 

まずは裏表紙の出版社からの紹介文を引きます。


人事異動で新しい部下がやってきた。入社4年目の彼女は、素直で有能、その上、まずいことに好みのタイプ。苦しい片思いが始まってしまった(表題作) ほか四十代・課長達の毎日をユーモアとペーソス溢れる筆致で描く短編5編を収録。上司の事、お父さんの事、夫の事を知りたいあなたにもぴったりの1冊です。


 

 

 

精神科医・伊良部シリーズ三冊以来、久しぶりに奥田氏の小説を読んだ。この作品は第128回直木三十五賞候補だったんですね。『イン・ザ・プール』や『空中ブランコ』に負けず劣らずの出来だと思います。収められた5篇の短編はすべて、サラリーマンなら「ある、ある」と思ってしまうものばかり。仕事上そこそこ力があり自分でもそれなりの自負があるが、まだまだ上がいる中間管理職の微妙な立場であるが故の悲哀がよく現れている。決して深刻ぶらず軽いテイストでユーモアを交えながら物語を紡いでいくところに奥田氏のセンスが光る。読者は読んでいて疲れない。読んだ後、かえって元気をもらう。ホント、上手い!