佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

オレたち花のバブル組

「押木はいい奴だった。アイツは結局、銀行の業績が思いっきり悪い最中に死んじまって、いまようやく盛り返してきた銀行業界の復活は見ないままだ。だけど押木だけじゃないんだよな。オレたちバブル入行組は、ずっと経済のトンネルの中を走行してきた地下鉄組なんだ」

 渡真利のセリフに熱がこもる。「だけどそれはオレたちのせいじゃない。バブル時代、見境のないイケイケドンドンの経営戦略で銀行を迷走させた奴ら――いわゆる”団塊の世代”の奴らにそもそも原因がある。学生時代は、全共闘だ革命だとほざきながら、結局資本主義に屈して会社に入った途端、考えることはやめちまった腰抜けどもよ。奴らのアホな戦略のせいで銀行は不況の長いトンネルにすっぽりと入っちまったっていうのに、ろくに責任もとらないどころか、ぬけぬけと巨額の退職金なんかもらってやがる。オレたちはポストも出世も奪われていまだ汲々としたままだっていうのにな」

                                    (本書P231-232より)

 

 『オレたち花のバブル組』(池井戸潤・著/文春文庫)を読みました。

 冒頭に引用した渡真利の熱いセリフ、その気持ちよくわかりますよ。たしかに日本の高度成長期を牽引してきたという自負があるかも知れませんが、後世にツケを回しすぎです。国レベルで見れば巨額の財政赤字、借金、年金制度の破綻。若い者からすれば「ろくに責任もとらないどころか、ぬけぬけと巨額の退職金なんかもらってやがる」という愚痴も出ようというもの。

 ご自身がバンカーでいらっしゃったという池井戸氏のバンカーとしての矜持とはなにか。それはおそらく「銀行内のお偉いさんの方ではなく、客の企業の方を向くこと」だろう。銀行の都合でものを考えず、顧客企業の再建・発展を考える。検査前車内検討会における半沢と福山との議論にはその考え方の違いが鮮明に出ていた。池井戸氏が努めていらっしゃった銀行は三菱銀行だったと聞く。現在の三菱東京UFJ銀行ですね。私のいとこが勤めている銀行です。それも人事じゃなかったかな。どんな風に仕事しているのかな、こんな伏魔殿のような組織で働いているのか、なんてついつい心配してしまうではないか。滅多に会うことがないが、次に会ったときには絶対質問してしまうな。根掘り葉掘り興味本位で。(笑)

 

 最後に出版社の紹介文を引いておきます。


「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。巨額損失を出した一族経営の老舗ホテルの再建を押し付けられた、東京中央銀行半沢直樹。銀行内部の見えざる敵の暗躍、金融庁の「最強のボスキャラ」との対決、出向先での執拗ないじめ。四面楚歌の状況で、絶対に負けられない男達の一発逆転はあるのか。