佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

美雪晴れ - みをつくし料理帖

「海文堂は実に良い店だったのですよ。清右衛門先生の本も、随分と沢山商ってくれていましたのに、あんなことになって。私はもう、無念で無念で・・・・・・。今日、店の前を通りかかったら、既に薬種問屋に様変わりしていました」

                                  (本書P232より)

 

 

『美雪晴れ - みをつくし料理帖』(高田郁・著/ハルキ文庫)を読みました。

 

まずは出版社の紹介文を引きます。


名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい―。一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。


 

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

  • 作者:高田 郁
  • 発売日: 2014/02/15
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 待ちに待った「みをつくし料理帖」シリーズ第九弾。冒頭に引用したとおり、作中に「海文堂」の店じまいが出てきますね。おまけにその店の後に薬種問屋ができたとか。神戸の海文堂も閉店後はドラッグストアになったとか。高田さんが贔屓にしていらした海文堂の閉店に重ねてどうしても書きたかったのでしょうね。

 四季を感じるおいしそうな料理。凜として綺麗な生き方。期待に違わない水準は安心感があります。おまけに神戸人にはわかる「海文堂」を登場させるプチ・サプライズ、小野寺数馬が登場する短編が巻末に特別収録してあるというサービスぶり。まるで「つるや」の料理のように行き届いているではないか。修辞は決してくどくはなく、むしろ淡泊である。余計なものを削ぎ落とし、どうした表現が一番読者に伝わるかを吟味した結果なのかも知れない。料理や盛りつけのコツと同じです。今年八月頃に上梓予定の『天の梯』が完結編とのこと。いよいよですなぁ。