佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2014年2月の読書メーター

2014年2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2482ページ
ナイス数:1947ナイス

なつかしい時間 (岩波新書)なつかしい時間 (岩波新書)感想
長田氏が好きなもの。何でもない五月の美しい光景。無用の時、ふるさと、気風、「退屈」というゆったりした時間、遠くを見やる眼差し。長田氏が嫌いなもの。偏差値、最近氾濫している訳のわからない名詞。コンビニ、ファーストフード、メール、ネット。遠くを見る眼がなくなったこと。習慣の力がなくなったこと。失われたり、変容してしまった気風、スタイル、習慣を懐かしむ気分は大変よくわかります。しかし、いささか決めつけが過ぎます。とはいっても、この本を読んでいるあいだ、心なしか時間がゆっくりと快く流れていたのは確かだ。良き随筆。
読了日:2月28日 著者:長田弘

 


美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)感想
四季を感じるおいしそうな料理。凜として綺麗な生き方。期待に違わない水準は安心感があります。おまけに神戸人にはわかる「海文堂」を登場させるプチ・サプライズ、小野寺数馬が登場する短編が巻末に特別収録してあるというサービスぶり。まるで「つるや」の料理のように行き届いているではないか。修辞は決してくどくはなく、むしろ淡泊である。余計なものを削ぎ落とし、どうした表現が一番読者に伝わるかを吟味した結果なのかも知れない。料理や盛りつけのコツと同じです。今年八月頃に上梓予定の『天の梯』が完結編とのこと。いよいよですなぁ。
読了日:2月22日 著者:高田郁

 


嫌な女 (光文社文庫)嫌な女 (光文社文庫)感想
肉体のピークは二十歳前後であっても、人はやはり六十年、七十年と生きて完成するものなのだなぁ。長い年月をかけて人は深く深く成熟していく。こうありたいと願っても、そうならないことも多いけれども、それが人生だ。なんとか心の中で折り合いをつけるしか無い。幸せな人生とは何なのだろう。どうすれば幸せに生きることが出来るのか。この問いに対する作者・桂望実氏の答えは「恕」であるように思う。ゆるす、おもいやるこころ。人間は白でも黒でも無い。善でも悪でも無い。これでいいという到達点も無いし、それではダメだという断定も無い。
読了日:2月20日 著者:桂望実

 


ジェノサイド 下 (角川文庫)ジェノサイド 下 (角川文庫)感想
巻末の謝辞に「考証の瑕疵を含め、全ての文責は著者にある」と書いてあります。フィクションとして読めばよいのですから目くじらを立てるのは大人げないと思うのですが、小説中の一部記述には不快感を禁じ得ません。戦争であれ、政治であれ、そんな短絡的に善悪を論じてはいけないのでは無いでしょうか。あいにく私は自らの民族、国を貶むような自虐的趣味は持ち合わせていない。と、まあ、高野和明ファンから袋だたきに遭いそうなことを書いてしまいましたが、その点があってなお圧倒的な物語の魅力にぐんぐん引き込まれました。凄い小説です。
読了日:2月16日 著者:高野和明

 


ジェノサイド 上 (角川文庫)ジェノサイド 上 (角川文庫)感想
作者の歴史観、政治観には浅さと偏りが見られ同意できない。しかし、突然変異による人類の進化、現人類を圧倒的に超えた知性、その知性がこれまで不可能とされた数学的処理を可能にすること、しかもそのことが複雑系を完全に理解してしまうという知的好奇心をビンビンに刺激してくれる着想は圧巻。下巻で作者が『無限に発展した道徳意識の保有』にまで言及するのかどうかも興味あるところ。一気に下巻に突入したいところだが、そうすると徹夜になることは確実。おそらく続きが気になって仕事も手につかないだろう。やむなく、しばしの睡眠に入る。
読了日:2月14日 著者:高野和明

 


変見自在 偉人リンカーンは奴隷好き変見自在 偉人リンカーンは奴隷好き感想
国家に謂われなき従軍慰安婦という罪を着せた河野洋平、同じく虐殺の濡れ衣を着せた後藤乾一早大教授、なんとしても日本政府を悪者にしたい朝日新聞船橋洋一主筆、偏った史観で公式にお詫びを述べてしまう村山富市、ろくに取材もせず日本軍守備隊長が沖縄住民に集団自決を命じたとウソを書いたノーベル文学賞作家大江健三郎・・・、ウソがあたかも真実であるかのように報じられている現状に悔しさがつのる。まさに日本を讒(ざん)する人々のなんと多いことか・・・
読了日:2月8日 著者:高山正之

 


幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))感想
不完全さこそが人間を人間たらしめているのか。あるいは死が・・・。「全面突破(トータル・ブレイクスルー」を経験した子供は、もはや神の領域の存在なのか。判らないことばかりだ。ひとつだけはっきりと確信したことがある。人にとって、飼育されて幸せであると云うことはありえないと云うこと。
読了日:2月8日 著者:アーサー・C・クラーク