佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2014年3月の読書メーター

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2887ページ
ナイス数:1478ナイス

じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (16) (アクション・コミックス)じゃりン子チエ―チエちゃん奮戦記 (16) (アクション・コミックス)感想
渉先生の妻・朝子さんご懐妊。テツは、最近、朝子さんの顔を見ないのを「離婚か?」と早合点。早速、内偵をはじめる。テツは憎まれ口をたたきつつ、実は気遣っている。このあたり、素直になれないのがこの男のややこしいところだ。素直になれないといえば、マサルである。チエのことが気になって仕方が無いくせに、憎まれ口ばかりたたく。もう少し成長して、自分が実はチエのことが好きなのだと気づくはずだが、そのときマサルは己の心にどう対処するのだろう。私はこの屈折した子ども・マサルのことが大好きなのだ。私も相当屈折しているなぁ。
読了日:3月30日 著者:はるき悦巳

 


風の果て〈新装版〉 下 (文春文庫)風の果て〈新装版〉 下 (文春文庫)感想
若き頃、同じ道場に通った仲間。家柄の違いこそあれ、一緒に稽古し、一緒に遊び、仲間として価値観を共有できた。未来がたっぷりある若いうちは、それぞれが人生どうなるか判らないという不確実性がある分、希望もある。しかし、四〇才、五〇才と歳を数えるとそうはいかない。ある程度、成功した者とそうでなかった者がはっきりする。久しぶりに会う友と「おい。おれ、おまえで話そう」と断らねばならないことが全てを現している。ほろ苦いことだが、生きて、歳を重ねるとはつまりそういうことだ。
読了日:3月29日 著者:藤沢周平

 


風の果て〈新装版〉 上 (文春文庫)風の果て〈新装版〉 上 (文春文庫)感想
百田尚樹氏の『影法師』の連想で読むことにした。上士と下士の間の厳しい身分制度、部屋住みの身の悲哀、婿養子に入ることでどうにか一人前として扱われ、己の才覚を発揮する場も与えられる。生きて行くにも恋愛をするにも壁だらけの中で、なんとかその壁を突き破ろうとする者、壁に阻まれたままの境遇の中で自分の生に意味を見いだそうとする者、様々な生き方と運命のいたずらが錯綜するなかで、若き頃、同じ道場に通った仲間がそれぞれの人生行路が決まってゆく。人は「生まれではなく、どう生きたかだ」と思いたい。下巻にすすむ。
読了日:3月23日 著者:藤沢周平

 


幸福な生活 (祥伝社文庫)幸福な生活 (祥伝社文庫)感想
百田尚樹ショートショート。たっぷり愉しませていただきました。ちょっと毒を含んだ最後の一行が秀抜。まるでよく出来た落語のオチのようだ。百田氏なら、新作落語も易々と創ってしまうのではないか。それほどに百田氏の人を愉しませる手練手管はきわめて巧みで、その手腕はあらゆる趣向の創作に発揮される。本書を含めこれまで百田氏の小説を7作読んだが、そのどれもが新鮮で少しも退屈させない。スゴイとしか言いようがない。
読了日:3月23日 著者:百田尚樹

 

 


ラッシュライフ (新潮文庫)ラッシュライフ (新潮文庫)感想
全くの赤の他人の人生が意外なところで交錯し意外な結果に収斂するという伊坂氏お得意の展開である。著者の他の作品を読んだときにも感じたことだが、井坂氏は作品を通じて氏の倫理観を随所に開陳してくれる。本書においてはなんといっても空き巣泥棒の黒澤にそれを見ることが出来る。変ないい方ではあるけれど、この泥棒は素晴らしく倫理的である。(笑) なにせ空き巣に入った後に必ず盗品リストを作成し、被害者の煩わしさを軽減して差し上げるのだから。この泥棒黒澤は『重力ピエロ』にも登場するらしいので、そちらも読まねばなるまい。
読了日:3月21日 著者:伊坂幸太郎

 


知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)感想
「インテリジェンス」ってのは単なる知能あるいは情報をさす言葉ではなく、情報の集積とその情報に対する適切な考察と評価、さらにその先に現れるであろう事象を予測するとともに対応処置まで演繹することと理解しました。共に最高レベルの知性を持つ手嶋氏と佐藤氏の対談はエキサイティングだった。私は心のどこかで評論家を信用していないところがあり、くだらない御託を聞かされるのではないかと危惧していたのだが、手嶋氏の「所詮、完璧なインテリジェンスなどありません」の一言に杞憂であったと判った。これぞまさにインテリジェンス。
読了日:3月18日 著者:手嶋龍一,佐藤優

 


影法師 (講談社文庫)影法師 (講談社文庫)感想
人は何のために生きるのであろう。ただ生きるために生きる。己のDNAを残すという意味ではそれも良い。しかし志を全うするために生きる生き方もある。あるいは志を全うするために死ぬという生き方、つまり命を代償に志を遂げるという生き様(あるいは死に様)である。人には天命というものがある。人一人、天命に逆らえるものではない。己の命を投げ出してはじめて叶う志もある。勘一と彦四郎は「刎頸の交わり」を交わした。そして彦四郎はみねに「どんなことがあってもお前を守ってやる」と約束した。約束の重みとはそれほどのものなのか・・・
読了日:3月14日 著者:百田尚樹

 


民主主義とは何なのか (文春新書)民主主義とは何なのか (文春新書)感想
人がもって生まれた自然権として、生命と財産を脅かされること無く生活を営もうとするならば、人それぞれが勝手気ままなふるまいに及ばぬよう統制する力(つまり権力)を必要とする。しかしそれは権利を権力をもって抑制することに他ならず、民衆と権力の間に闘争が生じるという撞着に陥ることでもある。すなわち人権を基本とする「民主主義」は本質的に権力に対する闘争のドグマを内包するのだ。従って我々は民主主義を自明のものとする思考停止状態から脱するとともに、「人権」の呪縛を断ち切る理性を持つ必要がある。・・と、こういうことかな?
読了日:3月13日 著者:長谷川三千子

 


「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)感想
人生というものはわからない。様々な人々の縁が交錯し、偶然が引き起こした出来事が人の運命を大きく左右する。どれほど思いを遂げようと努力を重ねても、運命の女神が微笑んでくれなければ、その努力も無に帰してしまう。ファイティング原田は誰よりも厳しい減量をし、強くなる工夫と努力をし続けたボクサーだ。現役の間は己のすべてをボクシングに捧げた男。そんな原田に対しては、いかな気まぐれな女神も微笑まざるをえなかったのでは無いか。そう信じたい。百田さんの興奮した気持ちがひしひしと伝わってきました。素晴らしいノンフィクション。
読了日:3月3日 著者:百田尚樹