佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

7月の読書メーター

2014年7月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2433ページ
ナイス数:2146ナイス

 

七月は初めて読む作家さん(山本文緒、中田栄一、雪舟えま・・・)との出会いがあった。今後、別の作品を読んでみたい。また、以前から読み進めているシリーズを久しぶりに読みもした。アルバート・サムスン・シリーズ、87分署シリーズ、成風堂書店シリーズなどがそれだ。やはりイイ。上田早夕里氏の新シリーズ(妖怪探偵・百目)も今後が楽しみ。読んだ量こそしれているがワクワク感がある幸せな読書であった。

 


あすなろ三三七拍子(上) (講談社文庫)あすなろ三三七拍子(上) (講談社文庫)感想
世の中、理屈がすべてではない。正しいが正しくないこともある。男同士にしか判らないドメスティックな価値観だろうと、日本人にしか判らない島国根性だろうと、それを軽々にアナクロニズムと切り捨てられる筋合いはない。閉じた世界で昇華した精神世界を理解せず頭から否定するような態度こそが浅薄で偏狭な考えとして軽侮されるべきものだろう。一見バカで前近代的に見える応援団の中に深遠なるもの見た。今必要なのは、自由、博愛、人権などと一見正義と見える西欧流独善ではなく、様々な価値観をすべて包み込み併存させる度量なのだと気づく。
読了日:7月28日 著者:重松清


本をめぐる物語―栞は夢をみる (角川文庫)本をめぐる物語―栞は夢をみる (角川文庫)感想
北村薫氏目当て。というより他の7人の作家さんは初読みの方ばかり。収穫は雪舟えま氏『トリィ&ニニギ輸送社とファナ・デザイン』。なかなかの世界観でした。雪舟氏の他の作品も読んでみたい。他は???・・・かな。副題の「栞は夢をみる」の意味が不明。アンドロイドは電気羊の夢を見るかも知れないが、栞は夢を見ないだろうと思う。
読了日:7月26日 著者:

 

 


妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)感想
上田氏の著書『魚舟・獣舟』を読んだのは二〇一二年三月のことであった。その短編集第四話「真朱の街」を演繹する形でのシリーズが始まった。光文社の謳い文句は「妖怪ハードボイルド」なるもの。私が以前読んだものの中ではエリック・ガルシア氏の『さらば、愛しき鉤爪』を始めとする<鉤爪シリーズ>が「恐竜ハードボイルド」と呼ばれるものであったが、「恐竜ハードボイルド」が有るならば「妖怪ハードボイルド」があったとしても不思議ではない。第四話「炎風」に書かれた妖怪とヒューマノイドの恋が切ない。このシリーズ、読んでいきます。
読了日:7月20日 著者:上田早夕里


本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)感想
『本をめぐる物語 一冊の扉』、なんという蠱惑的な題名なのだろう。本が好きで暇さえあれば書店をウロウロする性癖を持つ人間は十中八九この罠に捕らえられてしまうだろう。さながら本の虫(紙魚)を食べる食虫植物のようなものだ。書店の平台に本書と『本をめぐる物語―栞は夢をみる』が積んであるのを目にした私は、一度は罠に捕らえられてなるものかと通り過ぎたが、後ろ髪を引かれまわれ右をしてしまったではないか。書痴の性と云うべきか。「メアリー・スーを殺して」(中田永一)と「ラバーズブック」(小路幸也)が良かった。
読了日:7月17日 著者:中田永一,宮下奈都,原田マハ,小手鞠るい,朱野帰子,沢木まひろ,小路幸也,宮木あや子


被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ)被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ)感想
大好きな87分署シリーズの第5弾である。書かれたのが1958年というから私が生まれる一年前。古き時代の警察小説といった風情がなかなかよい。"KILLER'S CHOICE"(殺人者の選んだもの)という原題の意味が味わい深い。本書は早川書房から発売されている五六冊のうち五冊目。五六冊と言えば、現在の読書ペースでこのシリーズだけを読み続けても半年はかかる量。まだまだ先は長い。しかし楽しみな長さである。古本でぼちぼち買いそろえ、順番に読んでいくのは、私にとって極上の楽しみなのだ。
読了日:7月17日 著者:エド・マクベイン


サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)感想
「君と語る永遠」に泣きそうになった。やっぱり書店はイイ。世の中には二とおりの人間がいる。書店で1時間でも半日でも、場合によっては一日でも過ごせる人とそうでない人だ。書店は興味と謎と発見と驚きとその他なんだかわからない何ものかに充ち満ちているのだが、その面白さ知ってしまうかどうかなのだろう。必ずしも書店の面白さを知った方が良いとは限らない。それはそれで人生という限られた時間の多くを本に絡め取られてしまう不幸でもある。しかしそこは本に惚れた弱み、「あなた(本)のための不幸ならよろこんで」ってなものだ。
読了日:7月12日 著者:大崎梢


内なる敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)内なる敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
寡黙で心優しき知性派探偵アルバート・サムスン・シリーズ弟3弾。今作ではサムスンの探偵ぶりが後手後手にまわって冴えない。はっきり言って歯がゆい。いくらサムスンが真面目でありふれた探偵というキャラであっても、もう少し何とかならないのかとジリジリした。しかし事件解決後のサムスンのモノローグに味わいがあった。本作は手放しで推奨作というわけにはいかないが、地道にコツコツと調査を進める誠実な探偵という変な魅力は健在。マッチョでなく、天才的推理力も無い普通の探偵だが「なりたくない自分にはならない」という矜持が素敵だ。
読了日:7月6日 著者:マイクル・Z.リューイン


パイナップルの彼方 (角川文庫)パイナップルの彼方 (角川文庫)感想
初・山本文緒である。北上次郎氏をして解説の中で「いやあ、読むなりぶっとんだ。ここには本物の才能がある!」とまで言わしめた小説となれば読まないわけにはいかない。私は北上氏を信用しているのだ。なるほど、頁をめくるごとに驚きがあります。ここに書かれているのはごく普通のOLの、ごく普通の日常であり、その日常の中での心象風景だ。しかしそのごく普通のOLの考えていることに驚きがある。いやいや、女性はコワイ。お人好しを絵に描いたような男の私などは、女性がほんとうに考えていることなど知らない方が幸せというものだ。
読了日:7月2日 著者:山本文緒

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