『降霊会の夜』(浅田次郎・著/朝日文庫)を読み終えました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
初老の私はしばしば女と歩く同じ夢を見る。
ある嵐の夜、家の庭にうずくまっていた女は、その夢の女と瓜二つだった。
梓と名乗った不思議な女は、誰か会いたい人はいないかと尋ねてきた。
西の森にジョーンズ夫人という霊媒者が住んでおり、この世にいない人であっても会わせてくれるという。
私は小学三年生のとき、クラスに転校してきた「キヨ」の名を告げた……。
至高の恋愛小説であり、一級の戦争文学であり、極めつきの現代怪異譚。
まさに浅田文学の真骨頂!
人生をふり返るに「あのとき、ああすれば良かった」との思いが累々たる屍のように積み重なっている。おまけに人の心はその屍を直視するだけの強さを持っていない。忘れるのです。いや、忘れてしまうだけの強さも持ち得ず、無理やり忘れたふりをするのです。「---何を今さら。忘れていたくせに」 この一言が読者たる私の心に突き刺さる。浅田氏らしい小説でした。「角筈にて」や「ラブ・レター」に共通する浅田氏の情の世界がここにあります。