佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2014年の読書メーター(4)

降霊会の夜 (朝日文庫)降霊会の夜 (朝日文庫)感想
人生をふり返るに「あのとき、ああすれば良かった」との思いが累々たる屍のように積み重なっている。おまけに人の心はその屍を直視するだけの強さを持っていない。忘れるのです。いや、忘れてしまうだけの強さも持ち得ず、無理やり忘れたふりをするのです。「---何を今さら。忘れていたくせに」 この一言が読者たる私の心に突き刺さる。浅田氏らしい小説でした。「角筈にて」や「ラブ・レター」に共通する浅田氏の情の世界がここにあります。
読了日:12月1日 著者:浅田次郎

 


ひょうたん (光文社時代小説文庫)ひょうたん (光文社時代小説文庫)感想
人は思い定めればいつでも真人間になれる。まして良い出会いがあればなおさらだ。自分だけならついつい楽に流れそうになるが、真心のあるつれあいを持てばそうもいかない。年の暮れに好い話を読みました。真心を持って真っ当に暮らしていれば幸せに巡り会える。全ての短編がそう思える逸話でした。そろそろ落語『芝浜』を聴く頃合いです。「来年も邪なことは考えず真っ当に生きる」と思い定めるとしましょうか。それはそうと、宇江佐さんの体調が気になります。その後、お加減はいかがですか?
読了日:12月6日 著者:宇江佐真理

 


沢野字の謎沢野字の謎感想
私の敬愛する目黒孝二(北上次郎)氏をして「”本の雑誌”の発行人をつとめた二十五年間で、この本をいちばん愛しているのだ」とまで言わしめた本である。沢野ひとしの意味不明な「つぶやきコピー」を本人を含めた仲良し4人組がああでもない、こうでもないといじりまわり、最終的に優勝コピーを決定するというなんとも軽薄にして奥深く、無意味にして意味深、呆れかえった瞬間になぜだか頷いているという不思議な本なのだ。ちなみに私のお気に入りコピーは「き然とした態度で 妻とおフロに入った」と「この夏は私生活があれます」である。
読了日:12月6日 著者:沢野ひとし,木村晋介,椎名誠,目黒考二

 


家出のすすめ 現代青春論 (角川文庫クラシックス CL て 1-1)家出のすすめ 現代青春論 (角川文庫クラシックス CL て 1-1)感想
文庫初版は1972年。「家出」が「抑圧からの解放」、「不合理を我慢しない」ということの象徴だとすれば、当時の寺山氏の気分はよくわかる。しかしもし氏が今の時代(2014年)を生きていたとしたら「家出」を勧めただろうか。本書で寺山氏は「日本人のなかにはながいあいだ、忍耐の美徳……という不衛生な道徳的習慣がありました」という。しかし少なくとも私は「今」において、忍耐を不衛生な習慣とは言いたくはないのだ。とはいえ結びの言葉「自由というのは、もはや、不自由の反対語ではないのです」の慧眼ぶりたるや、とても適わない。
読了日:12月8日 著者:寺山修司,竹内健

 


再会 (講談社文庫)再会 (講談社文庫)感想
ご都合主義とのそしりを免れぬところはある。たしかにそれはあるが、それにもましてよく考えられ、よく練られ、面白いミステリーに仕上がっている。素晴らしい。意外性とどんでん返しの連続技にまいりました。苦労の末の江戸川乱歩賞受賞を心からお祝い申し上げたい。選ばれて当然でしょう。
読了日:12月11日 著者:横関大

 

 

 


柳生刺客状 (講談社文庫)柳生刺客状 (講談社文庫)感想
修羅を生き、唯々黙して死んでいく「いくさ人」の姿がカッコイイ。「すべて女が悪い。一言でそう云い切ったら、当代の才女たちは眉を逆立てて怒るだろうか」(『死出の雪』より) このあたりの描き方に隆慶一郎の美学が見てとれる。けっして女を貶んでいるのではない。ただ、隆慶一郎は「男がほんとうの男であった時代、女がほんとうの女であった時代」を描いているのだ。そして「いくさ人」とはなにか、「いくさ人」とはどうあるべきなのかを「生きざま」よりは「死にざま」の中に見いだすという究極の美学を語ってくれる作家なのだ。カッコイイ!
読了日:12月12日 著者:隆慶一郎

 


喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 1-1)喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 1-1)感想
冒頭部「別れ」の章にウールリッチの恋愛観が色濃くでている。この世に唯一無二の相手を求める。お互いがお互いを視る特別な眼を持っている運命の人との出会いである。その娘を失った喪失感と孤独は切なく胸に迫る。物語は復讐劇だ。復讐の原因を作った側に悪意はない。軽率さが招いた偶然のいたずらである。しかし、主人公ジョニーはその出来事を受け入れることが出来ない。死んでしまった娘はジョニーにとって唯一無二の恋人であり、彼のすべてであったのだから。彼の復讐は神の創りたもうた不条理を正す祈りにも似た作業だったに違いない。
読了日:12月14日 著者:コーネル・ウールリッチ

 


幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))感想
久しぶりに再読。「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」の書き出しで始まるミステリの名作。なぜ?なぜ?なぜ?の繰り返し、なぜ?なぜ?なぜ?の積み重ねの末、フラストレーションMAXIMUM状態での大どんでん返し。これはもうミステリの古典といって良い風格を備えています。次は『暁の死線』を読もう。
読了日:12月18日 著者:ウイリアム・アイリッシュ

 

 

 

 


夜鳴きめし屋 (光文社時代小説文庫)夜鳴きめし屋 (光文社時代小説文庫)感想
『ひょうたん』の後日譚。年の瀬に聴く落語に『芝浜』がふさわしいとすれば、『ひょうたん』と『夜鳴きめし屋』は年の瀬に読むならこの本といった風情がある。手際よく作った小料理にほどよい燗酒。店には気が置けない常連たち。まことによろしい。料理を作る場面の記述はほどんどレシピとして使えるほど。「鰯のかまぼこ」と「鰯の三杯酢」は作ってみたい。というか、それをアテにぬる燗の酒などやってみたい。あぁ、たまらん・・・
読了日:12月20日 著者:宇江佐真理

 

 


紙の月 (ハルキ文庫)紙の月 (ハルキ文庫)感想
墜ちてしまう危険はその人のすぐ側に、まるでその人に寄り添うようにあるのだろう。すぐ側にはあるが、人はそちら側に足を踏み入れてはならないことを本能的に知っており、普通は道を踏み外すことはない。しかしわざわざそちらに足を踏み入れてしまう人がいる。将来より刹那を選んでしまうのか、あるいは自分を破壊することでしか自分の存在を確認できないのか、それはわからない。本当に満たされることなどありはしないというのに。本書を読んでいて、佐藤正午氏の『身の上話』を読んだときと同じ気分を味わっていました。どちらも怖い小説です。
読了日:12月23日 著者:角田光代

 


月は誰のもの 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫 う 11-18)月は誰のもの 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫 う 11-18)感想
「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ第11作。これまでの連載でぽっかり空いていた10年間をふり返るかたちで語られる心温まるエピソード。少々書き急ぎ感が目につくが、宇江佐さんは登場人物一人ひとりをいとおしむように語っている。宇江佐さんの心情を思えば文句をつける気にはならない。心温まる物語をありがとうございました。
読了日:12月24日 著者:宇江佐真理

 

 

 


暁の死線 (創元推理文庫 120-2)暁の死線 (創元推理文庫 120-2)感想
故・江戸川乱歩は著者(ウィリアム・アイリッシュコーネル・ウールリッチ)の傑作順位として①『幻の女』、②『暁の死線』、③『黒衣の花嫁』と列べたそうだが、私なら①『喪服のランデヴー』、②『暁の死線』、③『幻の女』とする。故・寺山修司の意見に近いのではないかと思う。ミステリー・サスペンスとしての技巧、出来よりも、主人公たちの心情描写を重視する傾向があるのかも知れない。アイリッシュの描く都会での孤独感と、その孤独を癒やしてくれる唯一無二の人への渇望。私はアイリッシュのそうした情調をこよなく愛す。
読了日:12月28日 著者:ウィリアム・アイリッシュ

 


バケツでごはん (1) (Big spirits comics special)バケツでごはん (1) (Big spirits comics special)感想
動物たちが上野原動物園に勤務するリーマンで、通勤には地下鉄を使っているという設定が意外とツボだった。そもそも動物園にいる動物たちを我々は愛しくも哀しい存在として認識している。そしてまた同時に我々はリーマンの悲哀も知っているのだ。愛すべき動物たちとリーマンのオーバーラップがえもいわれぬ世界観を醸し出している。登場キャラクターの性格づけがまた良い。タイトルのネーミングも素晴らしい。ええ仕事してますなぁ。
読了日:12月30日 著者:玖保キリコ

 


バケツでごはん〈2〉 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)バケツでごはん〈2〉 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)感想
ミントちゃん登場。ギンペーはぎくしゃくしてる。誤解されるのは辛いよね。素直に思いを伝えるのは本当に大変だ。第2巻は「ギンペー、自意識過剰という名のストイシズムの権化と化すの巻」でしたな。
読了日:12月30日 著者:玖保キリコ

 

 

 


バケツでごはん (3) (Big spirits comics special)バケツでごはん (3) (Big spirits comics special)感想
ギンペーの自意識過剰状態は続く。ロンさん、家族のもとへ戻ってきてよかった。墜ちてわかったこともあったのかな。パンダも苦労しないといけないって事か。況んや人間をやっ!ってか? チェザーレが案外いい奴だった。魅力が増している。今後どんな扱いになっていくのか、楽しみだ。
読了日:12月30日 著者:玖保キリコ

 

 


バケツでごはん (4) (Big spirits comics special)バケツでごはん (4) (Big spirits comics special)感想
「父と娘の動物園」は極々ふつうの話だが、泣ける。心がじわっとなって、目頭が熱くなってくる。歳をとったのかもしれない。55年生きてきて、「やはり大切なのは仲間だ!」って、改めて言うほどのことでもない当たり前のことだけど。それにしてもギンペーもフラジーちゃんももどかしいなー。伝えたいことがあるのに伝えられない。このイジイジ感、齢55歳の私には今や無縁の世界だ。歳をとるのはさみしいことです。
読了日:12月31日 著者:玖保キリコ

 

 


バケツでごはん (5) (Big spirits comics special)バケツでごはん (5) (Big spirits comics special)感想
傷心のギンペーとチェザーレにゲイ疑惑? 笑える。ミントちゃんのことはあきらめて、いい縁を待とう。セクシースリーはやめておいたほうが・・・。 頑張れギンペー。(^^)/
読了日:12月31日 著者:玖保キリコ

 

 

 

 


バケツでごはん (6) (Big spirits comics special)バケツでごはん (6) (Big spirits comics special)感想
チェザーレの存在感がどんどん増してきている。そして、ギンペーに新しい恋・・・
読了日:12月31日 著者:玖保キリコ