佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

その女アレックス

『その女アレックス』(ピエール・ルメートル:著、橘明美:訳/文春文庫)を読了。
 
まずは出版社の紹介文を引きます。

週刊文春2014年ミステリーベスト10」堂々1位! 「ミステリが読みたい! 」「IN POCKET文庫翻訳ミステリー」でも1位。

早くも3冠を達成した一気読み必至の大逆転サスペンス。貴方の予想はすべて裏切られる――。

おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。
ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進する。

「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」(「訳者あとがき」より)。

未曾有の読書体験を、貴方もぜひ!

 
 
 たしかに2014年のベスト・ミステリーとの読者評を得るのも頷ける。「このミステリーがすごい!」の第1位を獲得するにふさわしい小説といえる。とにかく「すごい」のだから。(ここからはネタバレ注意!)しかし、読んでいて辛かった。全編を通じて陰鬱で救いがない物語。そのくせ想像だにしなかった展開に驚き、新たな興味を覚え先を読まずにはいられない気分にさせる。このあたりが本書のミステリーとして優れるところ。そして驚愕のどんでん返し。序盤、中盤、終盤とまったく違う顔を見せる類い希な小説でした。それにしても救いがない。
 たまたまこの年末年始にコーネル・ウールリッチの復讐ものを2冊読んだのだが、小説としての味わいはコーネル・ウールリッチの方が上。コーネル・ウールリッチの復讐ものとは『喪服のランデヴー』と『黒衣の花嫁』のことであるが、わけても『喪服のランデヴー』の味わいは深い。『その女アレックス』も『喪服のランデヴー』も優れたミステリーだが、何度も読み返したくなる味わいを持つのは『喪服のランデヴー』なのである。