佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『テロリストのパラソル』(藤原伊織・著/講談社文庫)

『テロリストのパラソル』(藤原伊織・著/講談社文庫)を読みました。

初めて読んだのは10年以上前のこと。再読です。

出版社の紹介文を引きます。

 アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た事実とは……。史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作。  

  

テロリストのパラソル (文春文庫)

テロリストのパラソル (文春文庫)

 

 

 

テロリストのパラソル (角川文庫)

テロリストのパラソル (角川文庫)

 

 

やはり名作です。「偶然が多すぎる」「ご都合主義」との誹りもなんのその、文句があるならこれぐらいのものを書いて見ろってなもんです。そうおいそれと書けはしない。美しい文章で綴られた感傷と自己憐憫に酔いしれます。はっきり言って女々しい。しかし、男は女々しいものです。己の弱さを認めるわけにはいかないが、男も弱いのです。己の中にある強くあらねばと思う気持ちと弱さ、伊織さんはこの強くて弱い男を描くのが無茶苦茶上手い。「殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ」 テロリストの暗と青いパラソルの明、島村の陰と塔子の陽、この鮮やかな対比がこの重苦しい物語りに救いをもたらしている。