佐々陽太朗の日記

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『秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三)』(上田秀人・著/光文社時代小説文庫)

『秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三)』(上田秀人・著/光文社時代小説文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

六代将軍・家宣が世を去った。新井白石は、次期将軍の傅育係間部越前守と手を組むと見せかけつつ、失脚を策する。さらに家宣の墓所決定に疑惑を抱いた白石は、水城聡四郎に探索を命じる。徳川家縁の増上寺、寛永寺を調べる聡四郎を、御三家筆頭の尾張藩士たちが襲う。やがて尾張藩の背後に聡四郎を憎む豪商の影が…。快調なテンポで描く、好評シリーズ第三弾。 

 

秋霜の撃  勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

秋霜の撃 勘定吟味役異聞(三) (光文社文庫)

 

 

 強いっ! 強いぞ、水城聡四郎。そして、徳川六代将軍・家宣から七代将軍・家継への世継ぎの裏で繰り広げられる権力闘争は読み応えあり。上田秀人の剣豪小説にどっぷりはまりました。剣豪小説の華はなんといっても激しい斬り合いの場面。どうしても殺伐としがちなところを、ヒロイン役の紅の存在が明るさと温かみを添えている。そのあたりの妙も上田氏の筆の立つところ。このような小説の楽しみ方は、とにかく作者の意図するところに身を任せて読み進めること。これにつきる。

 印象に残った言葉は紅が聡四郎に向けて放ったこの言葉。

「頼って欲しいなら頼ることも覚えなければ駄目。人は与えられているだけでは我慢できないの。与えられ、与えて初めて人と人はやっていけるのだから」

 水城聡四郎、まだまだ青く成長過程。