『ハゲタカ 2 上・下』(真山仁・著/講談社文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
(上巻) 話題のNHKドラマ原作、緊急文庫化決定!「腐りきったこの国に復讐して差し上げます」いつか日本を買収すると豪語する、天才買収者・鷲津政彦が帰ってきた。標的となったのは誰もが知る巨大企業だった。
【著者コメント】 『ハゲタカ』は、序章に過ぎなかった・・・。そう言える作品にできないのであれば、出版はしない。そういう想いで書き始めました。
さて、結果はいかに? 読者諸兄にご判断を仰ぎたいと思います。
会社は誰の者か? なぜ、カリスマ的経営者を戴いていた名門が経営危機を迎えなければならないのか? さらには、21世紀の勝ち組企業すら、既にハゲタカたちに狙われている--。
ますます激化する企業買収(バイアウト)戦国時代を描きつつ、我々一人ひとりがどう生きるべきかについても一緒に考えることができれば幸いです。
(下巻) 鈴紡の次に、鷲津が狙いをつけたのは、巨大電機メーカー・曙電機だった。曙は買収阻止と再建の切り札として芝野を頼る。再び相対する二人。攻める鷲津、守る芝野、さらにアメリカの有力ファンドも買収に参入し、事態は混沌としていく。企業買収を舞台に、壮大なスケールで描いた話題作。
あらすじは次のとおり。
前作の最後で取った行動のため、命に危険を感じた鷲津。日本を離れ、世界を放浪して身を隠していた。帰国してすぐ、鷲津は最も信頼していた右腕ともいうべきアラン・ウォードが謎の死を迎えていたことを知る。仕事も私生活も荒れた鷲津だったがゴールデン・イーグルと異名をとった男の血はやはり健在。鈴紡を最初の買収対象にした鷲津だが、鈴紡のメインバンクのUTB銀行(元の三葉銀行)と対立することになる。UTB銀行の頭取に就任していた飯島は、最高事業再構築者責任者(CRO)として芝野を鈴紡へ送り込む。最終的に、鈴紡は...。
鈴紡の処理が決まった約1年後、芝野は曙電機のCROに就任していた。日本を代表する優良企業シャインや米国の軍事産業ファンドであるプラザ・グループによる曙電気獲得の嵐に、芝野と鷲津は巻き込まれていくのであった...。
ハゲタカ・シリーズを読む上で、実在し小説のモデルとなった企業は押さえておいた方が面白みが倍増する。もちろんあくまでフィクションであることは忘れてはならないのだが。
- 三葉銀行 - 三和銀行
- ミカドホテル -金谷ホテル
- 太陽製菓 - 東ハト
- 足助銀行 - 足利銀行
- 鈴紡 - カネボウ
- 月華 - 花王
- シャイン - キヤノン
- 曙電機 - 富士通を中心に大手電機8社(日立製作所、パナソニック、東芝、三菱電機、ソニー、シャープ、NEC、富士通)
- ゴールドバーグ・コールズ - ゴールドマン・サックス
- KKL - コールバーグ・クラビス・ロバーツ
- プラザ・グループ - カーライル・グループ
企業買収をめぐる虚々実々の駆け引きが繰り広げられ、読み応えは第一作を凌駕する。かつては栄華を誇った名門企業が崩壊していく姿に経営者の責任とは何か、会社は誰のものなのかを考えさせられた。 真山氏は「本当のサムライは、いつどこで死んでも悔いのないよう、どう生きるかを常に考えているのだ」とアラン・ウォード・シニアに語らせている。鷲津は父の残した「正義のために死ねるか」という言葉を常に自分に問いかけていたはず。アラン・ウォード・ジュニアが自分のために死んだのだと直感したとき、鷲津は死んだのだと私は考える。すでに死んだ身であれば何ものにもとらわれることなく為すべきことを為せる。怖れるものは何もない。地位にも、名誉にも、金にも、命にもとらわれることのない状態、常住死身、経済という戦場で鷲津は敵にするには最も恐ろしい男になった。次作『レッドゾーン』も読むのが楽しみだ。