『書を捨てよ、町へ出よう』(寺山修司・著/角川文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
あなたの人生は退屈ですか。どこか遠くに行きたいと思いますか。あなたに必要なのは見栄えの良い仕事でも、自慢できる彼や彼女でも、お洒落な服でもない。必要なものは想像力だ。一点豪華主義的なイマジネーションこそが現実を覆す。書を捨てよ、町へ出よう―。とびきり大きな嘘を抱えながら。家出の方法、サッカー、ハイティーン詩集、競馬、ヤクザになる方法、自殺学入門etc…。八歳にして詩を書き、時代と共に駆け抜けた天才アジテーター・寺山修司による、100%クールな挑発の書。
同じ題名の映画を観た後の読書となった。寺山修司の随筆集とでも言うべきもので、やはり映画とは別物と考えた方が良い。映画は私にはキツかった。汚らしい画に最悪の音楽。支離滅裂に観る者を煽るだけの映画。昭和の時代に棲息していた自意識過剰自虐的文化人のニオイがプンプン鼻につく。それでも二回も観てしまったのは、私が十代を一九七〇年代に過ごした人間だからだ。
さて、本書である。文章で読むと寺山氏の言いたいことは分かりやすい。映画に比べ、共感できる部分も多くある。わざわざ難しく生きようとしなければ、平凡ではあっても屈託の無い生き方がでそうなのに、あえてそうしない。このややこしい精神構造を生んだのが未だ戦争を引きずりながら経済的には高度成長を果たした昭和という時代なのだろう。
「第二章 きみもヤクザになれる」がいい。博打の話、特に競馬に係る話に寺山修司のかっこよさが際立っている。ロアルド・ダールの『南から来た男』は是非とも読んでみたい。