佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2017年3月の読書(まとめ)

 先月は久しぶりに吉田篤弘氏の世界を楽しんだ。夢うつつの心地よい世界は独特のものだ。独特と言えば北川一成氏のグラフィックの世界に触れたことも収穫だった。また『ビブリア古書堂の事件手帖』が一応の完結をみた。今後のスピンオフ展開に期待する。

 

3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2045
ナイス数:1052

北川一成 (世界のグラフィックデザイン)北川一成 (世界のグラフィックデザイン)感想
兵庫県の播磨地方に住み、アルコール中毒の私にとって本の表紙にある「富久錦」のロゴは日頃から親しんでいるものだ。しかし、これが北川一成氏のデザインであることは最近知った。また活字中毒でもある私にとって北川氏のデザインにある「文字」は非常に興味深い。手書きによる文字に味わいと深さと(書いた人の気分や気質が忍ばれるという意味での)情報量の多さがあるように、北川氏の造る文字には手書きと同様の味がある。非常におもしろい。
読了日:03月26日 著者:北川 一成


すらすら図解 MBOのしくみすらすら図解 MBOのしくみ感想
最近、株式を上場する動きが盛んである一方、会社の非上場化による経営の自由度を高める動きも目を引く。つい二日前に次のような記事も報道されたところ。MBOについては以前に少し勉強したこともあるが、おさらいの意味で本書を読んでみた。MBOによる買収スキームと必要な手続き、メリットとデメリットなど基本的なことが分かりやすく整理されている。勉強になりました。
読了日:03月26日 著者:


A HUNTER 狩人 【新装版】A HUNTER 狩人 【新装版】感想
森山大道氏の伝説的作品集の復刻版。ペーパーバックのような造りになっており、写真集としては開きが悪く見にくい。紙質にも問題がないこともない。しかし「ブレ・ボケ・アレ」と称される森山氏の写真であれば、これもアリだろう。本当は北川一成氏の手になる1997年発刊の本が欲しいのだが手に入らない。手に入るとしても状態の良いものであれば数十万円はするかもしれない。まあ、いつか古本に巡り会うことがあるかも知れないと夢見ておこう。
読了日:03月26日 著者:森山 大道


GRAPHICGRAPHIC感想
二次元の世界で何が表現できるか。視覚言語であるグラフィックが何故、力を持ちうるのか。巻末のインタビューでそれが解き明かされる。北川氏はデザインする時、まず直感から入り、様々なパターンをものすごい量作って検証していくという。結局、直感による最初のパターンが一番良かったということになるとしても、無駄ともいえるこの作業をキチンとやるところがプロなのだと感じ入った。「文字は文化を知ってこそ自由にできる」という言葉に考えさせられた。デザインは直感だけの遊びなどではなく、そこにはキチンとしたワケがあるということか。
読了日:03月26日 著者:北川 一成,佐藤 可士和,植原 亮輔,服部 一成,仲条 正義,佐野 研二郎,葛西 薫,野田 凪,安東 孝一


乙嫁語り 9巻 (ビームコミックス)乙嫁語り 9巻 (ビームコミックス)感想
待ちに待った第9巻。といいながら、発売は昨年12月のこと。なんと3ヶ月以上も新刊発売を見逃していた。どうしたことだ。  今巻も不器用で自意識過剰なパリヤの話。純情すぎて、そして思いが強すぎて自分の気持ちを他人にうまく伝えられないパリヤがいじらしい。今時の日本にはこんな女子は少ない。しかしそんなパリヤだからこそ恋というものの本質を見せてくれる。初々しい恋はかわいくもあり、いじらしくもある。そして美しい。
読了日:03月25日 著者:森 薫


ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)感想
いよいよシリーズ完結編。早く結末を知りたい気持ちと、いつまでも続いて欲しい気持ちがせめぎ合い、完結編を読む悦びにうち震えながらも、読み終えてしまう喪失感におびえるというわけの解らない心もちであった。しかし作者のあとがきによると、これからも番外編やスピンオフのかたちで『ビブリア』は続くとのこと。番外編とスピンオフはどう違うのだ、そんなケジメのないことでいいのかっと作者に鋭いツッコミを入れながらも思わずニンマリしてしまったのであった。チャンチャン!
読了日:03月21日 著者:三上 延


水晶萬年筆 (中公文庫)水晶萬年筆 (中公文庫)感想
わけの解らないものはあるけれど、余計なものがない静かな世界は吉田氏独特のものだ。雰囲気で押し切る作家さんだと思う。吉田氏の小説は現実と抽象の間にある。抽象から導き出された観念を表現しているともいえる。その手法は現実の世界に夥しい余計なものを削ぎ落とすことで観念を導き出すというものだ。現実の生々しさにうんざりした時、吉田氏の小説は束の間の夢ともうつつとも判然としない時を与えてくれる。それは本を読む人にとって”sanctuary”なのかもしれない。
読了日:03月10日 著者:吉田 篤弘


地方創生大全地方創生大全感想
工業中心に町をつくり変えなかった日本の地方には、山があり、川があり、海がある。食や工芸など文化の蓄積があり、地方にもかかわらず鐵道や道路のインフラが案外整っている。やる気になって、その地域の魅力を見出し世界に向かって発信すれば、様々な可能性が開けるはずだ。
読了日:03月06日 著者:木下 斉


モナ・リザの背中 (中公文庫)モナ・リザの背中 (中公文庫)感想
この小説はある大学教授が絵の中に入り込んでしまう話ですが、書き出しの3頁を読んだ私はこの小説の中に取り込まれてしまいました。理屈や秩序なんぞなんの意味も持たない絵の中の世界を理解しようとしても無駄なこと。吉田篤弘氏の諧謔を楽しむのみ。そう言いながら、何度も読み直し、何らかの理屈と意味を見出そうとする私は救いようのない俗物だと気付く。
読了日:03月06日 著者:吉田 篤弘

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