佐々陽太朗の日記

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『虹、つどうべし  別所一族ご無念御留』(玉岡かおる・著/幻冬舎時代小説文庫)

『虹、つどうべし  別所一族ご無念御留』(玉岡かおる・著/幻冬舎時代小説文庫)を読みました。

天下統一へ突き進む織田信長の命を受け、播磨平定に乗り出した羽柴秀吉は、別所長治の抵抗に合い、戦国史上稀にみる悲惨な籠城戦を引き起こす。その最中、終戦工作のため秘かに城中へ送り込まれていた女間者の希久は悲惨を極める戦況を前に究極の選択を迫られる――。絶望の淵に射し込んだ一条の光を哀感溢れる筆致で描く著者渾身の歴史ロマン。

 

 

「パンクは生き方じゃない、死に方だ」と書いたのは確か重松清さんの短編「シド・ヴィシャスから遠く離れて」だったか。本書においては「武士(もののふ)の生きざまは死にざまに現れる」といったところ。

 切支丹の女間者・希久の目を通して、滅びゆく別所一族を深く愛惜しつつ描いている。戦国という変革の怒濤の中で、別所氏は覇者となるべき者を見誤った。その代償は「死」。己が死ぬだけではない。自分の判断が配下の者、ひいてはその家族もろともの生死を決するのだ。

 名門の出にこだわり、最後まで新興の秀吉に負けたことを認めることが出来なかった別所吉親、家臣とその家族を思い自らの首と引き換えに周りの者の安泰を秀吉に願い出た別所長治。それぞれの死にざまを、自ら命を絶つことを教義で禁じられた切支丹の希久の目を通して視ることで、人として最も大切なことは何か、リーダーはどうあるべきかを考えさせられた一冊でした。