佐々陽太朗の日記

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『去年の冬、きみと別れ』(中村文則・著/幻冬舎文庫)

去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)

去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)

 

 

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則・著/幻冬舎文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか? それは本当に殺人だったのか? 「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。なぜなら、この事件は実は——。話題騒然のベストセラー、遂に文庫化!

 

 中村文則氏は初読みです。芥川賞作家として有名なので本屋でたびたび見かけてはいたのだが、何故か手に取らずにきた。そもそも私の読書傾向は芥川賞より圧倒的に直木賞に傾いている。そのうえ「中村文則」というペンネームが興味をそそらないのだ。肩の力が抜けているところは良いのだが、あまりにも平凡にすぎる。いっそご本名のほうが良いのではないかとも思う。余計なお世話か。

 さて小説の中身である。この小説はいろいろな意味で予想を裏切ってくれる。題名から純文学的恋愛小説を想像していたのだが、実はミステリーであった。読み方によっては純文学と言えなくもないし恋愛小説と言えなくもない。しかしこれはやはりミステリーである。それもかなり出来の良いミステリーであると断言しておこう。結末も予想だにしなかったもの。他にもいろいろな仕掛けがある。巻末に著者自らの解説まで付いている。確かにこの解説がなければ「M・Mへ  そしてJ・Iに捧ぐ」というイニシャルに関する疑問は解けないままだったろう。文章にはあまり惹きつけられなかったものの、190頁の割に中身が濃い小説には強く惹きつけられた。なぜなら私は復讐劇が好きだから。あっ、これはネタバレですね。

 映画化されるようだが、私には無謀なことのように思える。どのようなかたちにするのか想像も付かない。そういう意味では観てみたい気がするが、九分九厘期待は裏切られるだろう。でも、蝶の写真だけでも観てみたい。あぁ、どうしよう。