佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ぱっちり、朝ごはん』(林芙美子ほか・著/河出書房新社)

『ぱっちり、朝ごはん』林芙美子ほか・著/河出書房新社)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

その日の体調や気分を決定づける「朝ごはん」。
あのひとは、どんな朝ごはんを食べているの?
書き手の暮らしぶりが透けて見える「朝ごはんエッセイ」35篇を収録したおいしい文藝第5弾。

【収録作品】
林芙美子──朝御飯
色川武大──朝は朝食 夜も朝食
久保田万太郎──喰べもののはなし
角田光代──朝食バイキング
よしもとばなな──イタリアの朝ごはん
石垣綾子──朝食のたのしみ
堀井和子──1日3食、朝ごはんでもいい!
森下典子──漆黒の伝統
井上荒野──日曜日の気配
佐藤雅子──卵、たまご、玉子
万城目学──モーニング
山崎まどか──朝ごはん日和
吉村昭──朝のうどん
小泉武夫──秋田は納豆王国
山本ふみこ──朝餐
團伊玖磨──味噌汁
椎名誠──二日酔いの朝めしくらべ(国際篇)
西川治──大英帝国の輝かしい朝食—イギリス/田舎のホテル他
東海林さだお──オリエンタルホテルの朝食
池波正太郎──牛乳、卵、野菜、パンなど─フランスの田舎のホテル
小林聡美──ヒロの朝ごはん
阿川佐和子──豆乳の朝
蜂飼耳──ハノイの朝は
渡辺淳一──朝は湯気のご飯に納豆
向田邦子──海苔と卵と朝めし
河野裕子──卵かけごはん
筒井ともみ──早春の朝ごはん
堀江敏幸──白いお味噌汁
窪島誠一郎──卵かけご飯
増田れい子──さくらごはんを炊いた朝
川本三郎──「きよや」の納豆汁
久住昌之──朝のアジ
徳岡孝夫──霧の朝のハムエッグス
立原正秋──蝮と朝食
佐野洋子──二〇〇五年冬

 

 

 

 今日も元気だ朝ごはんがうまい!

 世の中には「朝は食欲がないから食べられない。珈琲だけ」とか「朝は野菜サラダとジュースだけ」とか「シリアルですませてる」などと私の理解の範疇を超えたことを宣う人がいる。それも意外に多い。しかし私は朝ごはんを大切にする男のひとりである。朝ごはんが健康に大切だとか、朝ごはんを食べないと脳が働きにくいとか、そういったたぐいの話ではない。むしろ最近では朝ごはんを食べると健康に悪いという説もあり、その説にはそれなりの説得力もある。では何故私は朝ごはんを大切にするのか。単純に朝ごはんが日々の楽しみだからだ。前日の夜7時頃に晩ごはんを食べ、朝5時に目覚めたとして、その間10時間。間食をしなければもうお腹はペコペコだ。ベッドから起きだし、トイレをすませるといそいそと朝ごはんの支度にかかる。炊飯器のスイッチを入れる。出汁をとり味噌汁を作り始める。ご飯が炊き上がるころ目玉焼き(サニーサイドアップ)を焼き始める。あとは納豆、味付け海苔、梅干しなどを用意する程度。日によっては卵をオムレツにしたり、アジの干物や鮭を焼いてみたり、湯豆腐を作ったりとアレンジはする。しかしさほど凝ったものを作ることはない。炊きたてつやつやのご飯があれば、おかずはシンプルなものほどうまい。私にとって朝ごはんは習慣であり、一日の始まりの儀式である。お日様が昇れば起き、しっかり朝ごはんを食べ仕事に出かける。そこにご大層な理屈はない。そうするのが当たり前なのであり、それこそが習慣なのだ。朝、起きたくない。仕事や学校に行きたくない。そんなことは考えない。日々の行動を習慣化する。しつけの問題だ。考える必要など無いではないか。理屈ではないといいながら結構理屈っぽくなってしまった。いかんいかん。

 さて本書『ぱっちり、朝ごはん』の中身である。さすが河出書房さんが選んだだけあっていずれも味のあるエッセイばかり。特に共感を呼ぶのは「森下典子──漆黒の伝統」だ。森下さんの朝ごはんのおともは桃屋の「江戸むらさき」だったらしいが、私にとってはブンセンの「アラ!」だ。桃屋は全国ブランドだが、ブンセンは関西それも兵庫県播州という地方ブランド。ブランドの違いこそあれ、海苔佃煮に対する偏愛ぶりは私も森下さんも共通のものだし、日本には同じような方が多いのではないか。いや、絶対に多い。間違いない。「万城目学──モーニング」は京都の喫茶店について書いたもの。百万遍の「進々堂」、東大路通の「喫茶 六花」に心惹かれる。確か柏井壽さんも京都を案内するエッセイに京都の喫茶店について書いていらっしゃったが、京都の喫茶店はなかなか奥深そうである。「吉村昭──朝のうどん」は宇和島で早朝だけ営業しているうどん屋の話。店名は書かれていない。おそらく「やまこうどん」のことかと思われる。この店のことは以前から噂に聞いており、私は以前から行きたいと思っていた。「椎名誠──二日酔いの朝めしくらべ(国際篇)」は世の酒飲みに共通する朝メシの問題だ。どれを読んでもそうだそうだ、なるほどなるほどと興味が尽きない。ほんに私は朝ごはんが好きだ。