佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『あかね空』(山本一力・著/文春文庫)

『あかね空』(山本一力・著/文春文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

希望を胸に、身一つで京都から江戸へくだった豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる永吉と、それを支えるおふみはやがて夫婦となった。固く大きい江戸の豆腐と、やわらかで小さい京風の豆腐。好みの違いに悩みながらも、二人で精を出し、周囲に助けられ、ついに表通りに店を構える。その一方、家族にはだんだん気持ちのすれ違いが大きくなっていた。商売を引き継いだ三人の子らまで、豆腐屋二代の機微を描いた、第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。

 

 

あかね空 (文春文庫)

あかね空 (文春文庫)

 

 

 山本一力氏の市井もの人情話。私の大好物です。京都で修行した後に江戸へ出て店を構えた豆腐職人の立志伝である。しかし本書は、単に苦労した末に成功する物語や勧善懲悪的物語で終わらず、もう一ひねりしてある。主人公・永吉が江戸で豆腐屋を開き、その近所に住むおふみと出逢い、やがてお互いにひかれ合い結婚。大変な苦労があったが二人の誠実な努力と善良な周りの助けがあってやがてお店は繁盛するようになる。とここまでは通常の立志伝である。物語がなんとなく不穏な様相を呈し始めるのが二人の子どもが成長し始めた頃からだ。夫婦、親子、兄弟の間で気持ちがすれ違い、もめ事が起こり、誤解としこりが残るようになる。一旦はギスギスしかけた家族が不思議な巡り合わせでお互いの想いを知ることになり、再び家族に固い絆が生まれる。めでたし、めでたしである。

 この小説は人が一緒に暮らしていくうえで相手を思いやることの大切さを教えてくれる。奇しくも昨日読んだ『神様のカルテ 0』に次のような意味のことが書いてあった。

「優しさ」とは「相手が何を考えているのかを考える力、つまり想像力」である。”

 心温まる物語にグイグイ引き込まれ、夢中で一気読みしました。それこそ幸せな時間でした。

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