佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ゲイルズバーグの春を愛す』(ジャック・フィニイ・著/福島正実・訳/ハヤカワ文庫)

『ゲイルズバーグの春を愛す』(ジャック・フィニイ・著/福島正実・訳/ハヤカワ文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

由緒ある静かな街ゲイルズバーグ。この街に近代化の波が押し寄せる時、奇妙な事件が起こる……表題作他、現代人の青年とヴィクトリア朝時代の乙女とのラヴ・ロマンスを綴る「愛の手紙」など、甘く、せつなく、ホロ苦い物語の数々をファンタジイ界の第一人者がノスタルジックな旋律にのせて贈る魅惑の幻想世界。        

ジャック・フィニイ(JackFinney,1911年10月2日-1995年11月16日)は、アメリカ合衆国のSF作家、推理作家、ファンタジー作家。姓はフィニイ(早川書房角川書店)の他、フィニー、フィニィの表記もある。代表作は『盗まれた街』と『ふりだしに戻る』で、前者は1956年の映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』とその後のリメイク作品の原作である。

 

ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)

ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)

 

 

 ここにあるのはフィニイのノスタルジーとロマンチシズム溢れる世界。中でも秀逸なのは最後に収録された『愛の手紙』。この短編を読むためだけに本書を買っても良いくらいです。

アンティークの机の抽斗の奥に、19世紀に書かれた女性からのラブレターが入っていた。私は試しに返事を書き、19世紀から存在する郵便局から投函してみた・・・女性の最後の手紙には何が書かれてあったのか。そして私がその後目にしたものは・・・

 時空を超えた恋愛ものはたくさんあります。『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)、『ライオンハート』(恩田陸)、『たんぽぽ娘』(ロバート・F・ヤング)、『ジェニイの肖像』(ロバート・ネイサン)、『美亜に贈る真珠』(梶尾真治)、『緑のベルベットの外套を買った日』(ミルドレッド・クリンガーマン)、『時をかける少女』(筒井康隆)、『満月』(原田康子)、『長持の恋(短編集・「ホルモー六景」第6話)』(万城目学)、『君の名残を』(朝倉卓弥)などなど。どれも甘く切ない物語だ。しかし、決して出逢うことのない設定という面で『愛の手紙』は独創的であり、それだけに純化された想いが際立つ。名作です。