佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

佐々陽太朗のぶらり居酒屋の旅<1> 信州・松本の居酒屋めぐりと諏訪五蔵めぐり(1日目)

 2018年5月18日から一泊二日で「信州・松本の居酒屋と諏訪五蔵をめぐる旅に出た。

 旅の足は”YUI PRIMA”。ゆったりシートでくつろぎながら酒を飲み、観光地をめぐり、夜は松本市内のホテルに泊まり、松本の居酒屋を自由にハシゴしようという趣向。また、二日目は安曇野の酒蔵「大雪渓」と諏訪五蔵(「舞姫」「麗人」「本金」「横笛」「真澄」)と計六蔵をめぐろうという酒飲みにはたまらなく魅力的だが、下戸にはわけのわからないツアーである。

【1日目の行程】

新大阪→千里中央→中央道(弁当昼食)→安曇野・大王わさび園(清流と北アルプスの眺め)→松本・ホテル花月(夕方から、「しづか」「きく蔵」「一歩」「山女や」「季寄料理よしかわ」など自由に居酒屋巡りを楽しむ)
【2日目の行程】

ホテル→安曇野・大雪渓(酒蔵見学)→諏訪・くらすわ(諏訪湖畔のレストランでランチ)→諏訪五蔵を巡って、試飲と買い物→千里中央→新大阪

 

 事前の天気予報では2日間とも天気が良くない。しかし、私は佐々陽太朗。最強の晴れ男である。名前におひさまの「陽」、ほがらかの「朗」が入っているのだ。天気に恵まれ、楽しく朗らかに旅をしたいという想いがつまっているのだ。名前は「ささ(酒)にようたろう(酔ったろう)」だが、志は高いのだ。

 通常”YUI PRIMA”の車中で供されるのは「シャンパン、ビール、丸福コーヒー、カフェオレ、カプチーノ、アップルジュース、オレンジジュース、緑茶、紅茶、ミネラルウォーター」である。しかしこの旅にあわせて私が三種のお酒を用意した。左から「信濃鶴 純米無濾過生原酒 しぼりたて」「裏佐久の花 辛口吟醸無濾過直汲み」「夜明け前 純吟生一本しずく採り」。「信濃鶴」「佐久の花」「夜明け前」は、いずれも信州松本を舞台にした夏川草介氏の小説「神様のカルテ」シリーズで主人公・栗原一止が通う居酒屋「九兵衛」で飲んだ酒として出てくる酒である。おそらく作者・草川氏も愛飲していらっしゃるのだろう。松本には「九兵衛」という居酒屋はおそらく存在しない。今回の旅ではそのモデルとなったと思われる居酒屋も探索したいと思う。その居酒屋とは「厨 十兵衛」、そして「樽吉 皆空道」。「厨 十兵衛」は映画版『神様のカルテ』でロケをしたようだし、「九兵衛」との名前の類似からしていかにもモデルになっているようには思える。一方、実は「樽吉 皆空道」であるとの噂もあり、いったいどちらなのか、あるいは両方なのか、そのあたりを確かめたいという想いがあったのだ。

 また、松本で居酒屋めぐりと云えばやはり太田和彦氏。太田氏の著書「居酒屋歳時記」には松本の居酒屋・バーの紹介がいくつかある。「よしかわ」「メインバー コート」「きく蔵」「あや菜」などなど。そんな居酒屋紀行文を読みながらの旅だ。

純吟生一本しずく採り
純吟生一本しずく採り
純吟生一本しずく採り

 

 松本に入る前に安曇野の「大王わさび農園」を訪れました。

 木々の向こうにうっすらと常念岳の姿が・・・

 

 16:30ごろ「ホテル花月」に入り、明るいうちから居酒屋めぐりに出かける。

 まずは何をおいても「しづか」である。ここはホテルからすぐ近くにあり、お昼から営業しているのでこの時間でも開いている。私は過去三度訪問しておりなじみの店でもある。大女将、若女将も私の顔を覚えていて下さった。

「しづか」では一緒に旅をしている方々のうちのお二人(HさんとIさん)とカウンターに陣取った。料理人の仕事を間近に見ることが出来るこの席が好きだ。一軒目と云うことで肴はボリュームのあるものは避けて注文。飲み物は「大信州N.A.C.純米吟醸ひとごこち」。N.A.C.とは、農産物やその加工品の原産地が、信州・長野県であることを保証するもの。純米酒なのでアルコール添加もない。つまり100%信州産の酒だと云うことだ。柔らかな口あたりで、軽快な旨みが地産の肴の旨みを引き立ててくれる。食中酒としてなかなか良い酒です。

「沢ガニ」

「ねんぼろ」

「こごみ」

「信州産アスパラガス」

 続いて、酒を燗に変える。松本市の地酒「岩波」をぬる燗にしてもらった。これは「おでん」に合います。「おでん」は「しづか」の定番。見た目はありきたりだが、しみじみうまいのです、これが。若女将が漬物を出して下さった。これまた酒がすすむ一品です。自家製でないとこの味はでません。おでんにせよ、漬物にせよ、こうした地味でありきたりなものでホンモノの味が味わえる居酒屋が「しづか」です。誠実といえば良いのでしょうか。やはり私のイチオシはここです。

 落ち着けていつまで居ても居心地の良い「しづか」ですが、はるばる松本に足を運んだからには他の居酒屋もめぐりたい。次に暖簾をくぐったのは、「しづか」から五分ばかり南に歩いたところにある「樽𠮷 皆空道」。ここは日本酒が充実している様子。日本酒好きの私好みの店である。カウンターへ向かう途中、ちらっと目に入った冷蔵庫の酒が「信濃鶴」。うれしいねえ。燗にしてもらった。

 大将に何かオススメのアテをと訊ねると「焼き味噌」を作って下さった。酒のアテに良し、ディップとしてパンや野菜につけて食べて良し。酒がすすむのなんの。こちらの大将は酒に詳しく、いろいろなお話しを聴けました。カウンター席の楽しみはこうしたところ。オススメの酒を訊ねると「川中島 幻舞 ひとごこち 特別純米 無濾過生原酒」を奨めてもらった。長野市川中島町にある蔵「酒千蔵野」の酒だという。この蔵は伝統を大切にていねいな酒造りをする老舗らしい。飲んでみた印象は柔らかできれいな酒。女性的なやさしさが最初の印象ですが、しかしその中に心の強さも同時に感じる酒です。すばらしい。また応援したい蔵が出来ました。

 おとなりに居合わせた地元の常連さんと話をしたところ、日本酒を飲むならここが一番とのことでした。私もそう思います。また、その方曰わく、『神様のカルテ』の作者もときどきこの店にいらっしゃるとのこと。私としては小説に登場する「居酒屋 九兵衛」はこの店をイメージして書かれたに違いないと思います。もちろん勝手な想像ですが。実は「厨 十兵衛」にも行ってみたのですが、ちょっと覗いただけで出てきました。理由は申し上げません。その日の私の気分でなかったとだけ云っておきます。


MOV 樽𠮷 焼き味噌

 さて、お酒にも十分酔った私ですが、夜はまだ長い。さらに市内の酒場を求めてぶらりぶらりと彷徨った夜でした。幸せだなぁ・・・。