佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2018年7月の読書メーター

 7月は通常の読書量。様々な分野のものを読んだ。私の読書傾向は乱読。手あたり次第というやつである。『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎)はインパクトのあるノンフィクション。ユーモアに富んでおり文章の格調はないものの名著だと思う。初めて読んだ石田千さんのエッセイにもはまりつつある。ありきたりの日常がいとおしくなる。ありきたりの日常といえば庄野順三氏の世界。これも好きだなぁ。好きだといえば時間ものSF。久しぶりに『ターン』(北村薫)を再読。

 7月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2786
ナイス数:1253

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)感想
久しぶりにワクワクした興奮を味わわせてくれたノンフィクションでした。こうした生き物の生態を著したものといえばやはり日高敏隆氏が思い浮かぶ。比較しても意味が無いと思うが、日高氏の著書に比べると格調の高さで圧倒的に日高氏に軍配が上がる。しかし、読んでいての臨場感であったり親しみやすさ、ユーモアの点では前野ウルド浩太郎氏が優っているといえる。とにかく面白いのだ。学者は頭の良さ(もちろん前野氏は頭が良いのだろうが)と努力だけでは無い。最終的にはその人の魅力、人間力がものを言うのだろう。今後の注目株でしょう。
読了日:07月07日 著者:前野ウルド浩太郎


NAOSHIMANAOSHIMA感想
2018/07/03 ベネッセハウスでの安藤忠雄氏講演会にて購入。フランス語と英語のバイリンガル本であるが、あいにく私はどちらも判らない。辞書を引けば英語は何とかなるかもしれないが、そこまでヤル気はない。安藤先生にサインをいただいた。講演内容も安藤先生の考え方がよく分かり大変楽しかった。大阪中之島にこどもの図書館を作るプロジェクトが進行中。応援したい。
読了日:07月07日 著者:TADAO ANDO


箸もてば箸もてば感想
石田千さんのおきにいり。朝の梅干し、ぼろぼろジーンズ、ビールジョッキに、もめんのとうふ、はしご酒と夜中のうどん。そしてなによりもマスタードのちいさなあきびん。(おそらく”MAILLE”マイユ製のものと推察される) おそらくは都内の外れでお一人暮らしでいらっしゃる石田さんが、日日の些事を食べものの季節感とともに淡々と綴ったエッセイ。 平易な言葉で、肩の力を抜いて、感情を抑えた筆致で書かれた石田さんの日常がなんとも味わい深い。 他の作品も読んでみたい。
読了日:07月07日 著者:石田 千


震える牛 (小学館文庫)震える牛 (小学館文庫)感想
文庫化されたのが2013年5月のこと。読むまで随分日が経ってしまった。もう賞味期限は過ぎてしまった感は否めないが、どうして独特の緊迫感を持ち、最後まで一気に読ませてしまう。最近、狂牛病BSE)という言葉を聞かなくなり、問題になった頃の危機感は薄れているものの、食品偽装など食の安全問題は決して無くなってはいない。本書を読んだ今、もう安売りチェーン店やろくな調理をしない居酒屋には行けません。たとえ行ったとしても、栓の抜いてない瓶ビールくらいしか口に入れることができそうにありません。あぁ気持ち悪い。
読了日:07月11日 著者:相場 英雄


バスを待って (小学館文庫)バスを待って (小学館文庫)感想
 路線バスにはいろいろな人が乗り合わせる。その一人一人に人生がある。それぞれは見ず知らずで悩み、恋、不幸、病気、幸せ、希望など、それぞれの人生を歩んでいる。ありふれた日常の中にある心温まる刹那。それは決して特別ではないけれど、人が自分の心の柔らかい部分にそっと仕舞っている優しさを揺り起こす、そんな瞬間がある。  幸せを予感させる物語が多い。「キチンと生きていればいつかきっと良いことがあるよ」登場人物にそう語りかけたい気になる。心温まる20篇からなるオムニバス(omnibus =乗合自動車)でした。
読了日:07月14日 著者:石田 千


山本周五郎名品館II 裏の木戸はあいている (文春文庫)山本周五郎名品館II 裏の木戸はあいている (文春文庫)感想
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」 有名な草枕の一節にもあるとおり、自分の信念や価値観にこだわりを持って生きていくと不自由だ。もっと軽やかな生き方があるし、そのほうが生きて行きやすいことは明らかなのにそれができない。意地というやつである。一般に意地をはるやつは人間が小さい。しかしたとえ死んでも意地をはり通すやつはアッパレである。本書にはそんな人間が織りなす物語九篇が収められている。
読了日:07月20日 著者:山本 周五郎


星に願いを星に願いを感想
毎晩、ハーモニカの伴奏で唱歌を歌う。孫たちはみんなおばあちゃんを「こんちゃん」と呼ぶ。庭のムラサキシキブの幹にくくりつけた籠に詰めた牛脂を食べにコゲラが来る。シベリアから渡ってきたつぐみはまいてやったパン屑を食べに来る。優待パスでバスに乗る。大久保の「くろがね」で酒を飲む。席はいつもいちばん奥の畳の部屋。井伏鱒二のいい笑顔の写真が載ったポスターが貼ってある。そのポスターの下を自分の席と決めている。お酒は「山陽一」。みやこわすれが咲いた。季節はめぐる。穏やかな毎日がいとおしい。幸せのかたちがここにある。
読了日:07月21日 著者:庄野 潤三


日本一の「デパ地下」を作った男 三枝輝行 ナニワの逆転戦略日本一の「デパ地下」を作った男 三枝輝行 ナニワの逆転戦略感想
ひと言でいうと「覚悟を持って全力で事に当たる」ということかと思いました。心に残ったものを箇条書きで書き留めておく。 弱者の逆転戦略「ランチェスターの法則」 何かを変える時はスタート段階が一番辛い 愛情のかけ方一つで売り場は流行りもすれば廃れもする 誠意を尽くして押す局面では押すが、逆に譲るべきところは相手を慮って譲る これは無理と決めつけず、何でも試してみること 利害関係のない友人知人を持つ 
読了日:07月31日 著者:巽 尚之


ターン (新潮文庫)ターン (新潮文庫)感想
作者がある意図を持ってのことではあるけれど、二人称の語り口が鬱陶しいと感じた前半。おそらくこの前半を乗り切れず本を投げ出す読者も多いに違いない。後半に入るとぐんぐん物語に引き込まれ一気に読める。  主人公に子どもの頃から聞こえていた「声」は結局だれのものか。主人公が心の中で造り出したものか、あるいは泉さんなのか。どう解釈するかは読者次第であり、その解釈次第で味わいが違ってくるだろう。  時間ループ型のタイムリープもの。そこに恋がからむところが私好みである。
読了日:07月31日 著者:北村 薫

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