佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』(藤沢周平・著/新潮文庫)

『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』(藤沢周平・著/新潮文庫)を読みました。最近古本屋で目にして買ったもの。夜を徹して一気読みです。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

版木彫り職人の伊之助は、元凄腕の岡っ引。逃げた女房が男と心中して以来、浮かない日を送っていたが、弥八親分から娘のおようが失踪したと告げられて、重い腰を上げた。おようの行方を追う先々で起こる怪事件。その裏に、材木商高麗屋と作事奉行の黒いつながりが浮かびあがってきた……。時代小説の名手・藤沢周平が初めて挑んだ、新趣向の捕物帖――シリーズ第一作!

 

消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)

 

 

「彫師伊之助捕物覚え」シリーズ三部作の一作目である。我が読書記録をひもといてみると三部作の第三作『ささやく河』は既に2007年9月22日に読んでいる。第二作『漆黒の霧の中で』は未読のまま本棚にひかえている。ずいぶんいい加減な読み方である。体系的に本を読まず、行き当たりばったり、その時の縁と気分で本を読んでいるからこんなことになってしまう。藤沢周平については古本屋で並んでいる廉価な文庫をまとめ買いしておき、思いのままたまに本棚から取り出して読んでいるのでこういうことになる。つまりその時その古本屋にたまたまシリーズ第三作『ささやく河』だけがあった。その後、第二作『漆黒の霧の中で』を書い足し、今回『消えた女』を買ったということなのだ。

 さてこの『消えた女』ですが、イイ! すごくイイ!! なにがイイかといえば、ハードボイルド臭プンプンしているところがイイのだ。主人公伊之助の(酒にも女にも)ストイックな態度、心に持つ哀しみの影、揺るぎない強さがイイ。この強さはけっして勇猛果敢の類いではない。危険に際して敏感でむしろ用心してかかる。しかし、ここ一番対決せねばならぬとあっては腹を据え、絶体絶命の局面では命をかけてみせる勇気を持つ、そうした強さである。幼なじみの”おまさ”でなくても惚れようというもの。

 第二作『漆黒の霧の中で』を読むのが楽しみである。