佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2018年11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2671
ナイス数:979

五条路地裏ジャスミン荘の伝言板 (幻冬舎文庫)五条路地裏ジャスミン荘の伝言板 (幻冬舎文庫)感想
ミステリーではあるが、柏井壽氏らしく京都の良さが伝わってくる小説。たとえばプロローグを読むだけでも京都のイイものはそこかしこにちりばめられている。『開化堂』の茶筒、『柳月堂』のパン、『柳桜園』のほうじ茶、『ミール・ミィ』のミルクジャムと京都の良いもの、おいしいものが出てきて嬉しくなる。新興の行列が出来るうどん屋と町中の食堂のこしぬけうどんをめぐる考察など、今年の春に上梓された『グルメぎらい』(光文社新書)に通じるところがあると感じた。 
読了日:11月03日 著者:柏井 壽


管見妄語 始末に困る人 (新潮文庫)管見妄語 始末に困る人 (新潮文庫)感想
藤原氏の歴史や国家を見る目は正鵠を射ている。本書を読みながら、我が意を得たりと膝を打つこと頻りであった。けだし慧眼というべきであろう。
読了日:11月04日 著者:藤原 正彦

 


王様の背中 (福武文庫)王様の背中 (福武文庫)感想
本書に収められたお伽噺の中で秀逸なのは、やはり表題作『王様の背中』であろう。それこそ何の教訓も、感動もなく、しかしそこはかとないおかしみを感ずるところなど、まことに味わい深い。  挿画としての谷中安規氏の版画がまた、この本にいっそうの味わいを持たせており、これがまた良い。大切に保管して、何度か読み返したい本の一つである。
読了日:11月07日 著者:内田百閒


消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)感想
イイ! すごくイイ!! なにがイイかといえば、ハードボイルド臭プンプンしているところがイイのだ。主人公伊之助の(酒にも女にも)ストイックな態度、心に持つ哀しみの影、揺るぎない強さがイイ。この強さはけっして勇猛果敢の類いではない。危険に際して敏感でむしろ用心してかかる。しかし、ここ一番対決せねばならぬとあっては腹を据え、絶体絶命の局面では命をかけてみせる勇気を持つ、そうした強さである。幼なじみのおまさでなくても惚れようというもの。  第二作『漆黒の霧の中で』を読むのが楽しみである。
読了日:11月10日 著者:藤沢 周平


雪の断章 (創元推理文庫)雪の断章 (創元推理文庫)感想
本書は読者受けする黄金パターンを踏襲している。身寄りのない境遇→孤児院での苦労(憎らしいヒールの存在)→里親先での艱難辛苦(ヒールの存在)→白馬の王子の登場→恋心→恋愛成就。読者は主人公に感情移入し、憎らしいヒールに徹底的にいたぶられてもくじけず誠実に生きようとする主人公に拍手喝采し、白馬の王子の登場に歓喜し、紆余曲折を経ながらもハッピーエンドにおさまり胸をなで下ろし幸福に浸るのである。特に前半は続きが気になって読むのをやめられない。おもしろくないはずがないのだ。唯一の難点は主人公の心が頑なすぎるところ。
読了日:11月18日 著者:佐々木 丸美


ライトニング (文春文庫)ライトニング (文春文庫)感想
本書の魅力は端的に言って4点。天涯孤独の身になった美少女の行く末への興味。少女のピンチのたびに閃光と共に現れる騎士の正体。タイムパラドックスをかいくぐっての正義と悪の虚虚実実の戦い。ヒトラーチャーチルを物語に登場させるほどの壮大な意外性。  なにしろ孤児ものとタイムトラベルものという読者を惹きつけてやまない要素が合体しているのでエンタテインメントとして超一級の作品です。
読了日:11月22日 著者:ディーン・R・クーンツ


檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)感想
自分で食材を市場へ買い出しに行く。東坡肉(トンポーロ)つくりで一日を棒に振る。文壇随一の名コック・檀一雄氏はそんな人だ。所謂食通やグルメというのとは少し違う。食べることが好きでうまいものを家庭で作る。もちろん料理店で食べることもあるだろうが、檀氏の姿勢は自分で食材を選び、手に入れて自分で調理するという家庭料理人だ。結局のところ、それが一番うまいのだ。私も下手ながら厨房男子のはしくれ。そのあたりの感覚は共通している。垂涎の料理が92種。これはまねてみるほかあるまい。
読了日:11月23日 著者:檀 一雄


花だより みをつくし料理帖 特別巻花だより みをつくし料理帖 特別巻感想
4編それぞれに味わい深いが、抜きん出ているのはやはり「涼風あり」であろう。小野寺数馬とその妻・乙緒の心象風景が描かれた良作。惚れて惚れて惚れ抜いて一緒になった妻ではないけれど、そして容易に夫に心を見せない妻ではあるけれど、数馬はそんな乙緒の心の内にある真心に気づいている。情熱で結ばれる夫婦もあるだろう。そうありたいとも思う。しかしほんとうに夫婦に必要なのは真心と思いやりなのだ。それが分かるこの短編は秀逸です。小野寺数馬、なかなかの男であります。
読了日:11月29日 著者:髙田郁

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