佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

第31回和辻哲郎文化賞授賞式

「 第31回和辻哲郎文化賞授賞式」に出席しました。

 受賞作は以下のとおり

【一般部門】 

平川 新(宮城学院女子大学学長) 著『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』(2018年4月25日 中央公論新社 刊)

(選考委員 山折哲雄氏・阿刀田高氏)

 

【学術部門】 

石川 求 (首都大学東京大学院教授)著『カントと無限判断の世界』

(2018年4月10日 法政大学出版会 刊)

(選考委員 野家啓一氏・関根清三氏・黒住 真氏)

 

 

 一般部門で受賞された平川新氏の受賞の言葉は、これまで「偏狭でひ弱であった政策」という鎖国に対するイメージを覆すものでした。朝鮮出兵はボケが始まった秀吉の誇大妄想的失策ではなく、スペイン・ポルトガルの世界征服事業への対抗戦略であったという論。世界が日本を強大な軍事国と認識していたからこそ、鎖国政策は二六〇年も続いたのだという考えにはっとさせられた。先の大戦に敗戦した後の我が国の国防に対する考え方が果たして今のままで良いのだろうかと思うのは私だけだろうか。

 学術部門を受賞された石川求氏はあえて哲学的な話を避けてユーモアを交えて受賞の心境を話された。よかった。「無限判断」の話などされても小生にはちんぷんかんぷんである。

 私の出席の目的であった京極夏彦氏の記念講演「物語と小説 怪しさを語る事」は興味深いお話でした。

 まず席が舞台近くの真ん中であったので、京極氏の表情まで観察できたことがうれしい。小説とは何かを江戸時代の戯作から明治期の私小説への流れ、そして純文学と大衆小説へと紐解いていき、小説をおもしろくする技法まで論じられた一時間はたいへん勉強になった。とはいえ、京極氏の意図は聴衆に何かを教えようなどというものではなかっただろうけれど。「小説、文学、文化などというものはそう難しく肩肘張るものではなく、ただそれに触れ、感じれば良いのですよ。そうはいっても深い世界なんですけれどね」というようなことを仰ったように感じた。実際にそんなことはひと言も仰ってないけれど、私の勝手な妄想である。

 

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