佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『羽州ぼろ鳶組Ⅲ 九紋龍』(今村翔吾・著/祥伝社文庫)

羽州ぼろ鳶組Ⅲ 九紋龍』(今村翔吾・著/祥伝社文庫)を読みました。

喧嘩は江戸の華なり。大いに笑って踊るべし。
最強の町火消と激突!
残虐な火付け盗賊相手に、火消は一丸となれるのか
啓文堂書店時代小説文庫大賞第1位シリーズ続刊、堂々登場!

「実に泣かせる」文芸評論家池上冬樹氏、涙!
すばらしい新人作家だ。力強くてダイナミックで、実に泣かせる。生き生きとした語りで、読む者の心をぐっとつかむ。それもやさしく、あたたかく。巧い書き手だ。それでいて易きに流れない。火消たちの矜持、この世には命をかけて守るべきものがあることを高らかに謳いあげるのだ。だがそこに悲壮さはない。男たちは果敢に業火のなかに飛び込み、己が仕事をなしとげるだけだ。男たちの颯爽とした心意気に何度も胸が熱くなった。(解説より)

火事を起こし、その隙に皆殺しの押し込みを働く盗賊・千羽一家が江戸に入った。その報を受けた新庄藩火消・通称〝ぼろ鳶〟組頭・松永源吾は火付けを止めるべく奔走する。だが藩主の親戚・戸沢正親が現れ、火消の削減を宣言。一方現場では九頭の龍を躰に刻み、町火消最強と恐れられる「に組」頭〝九紋龍〟が乱入、大混乱に陥っていた。絶対的な危機に、ぼろ鳶組の命運は!?

 

 

九紋龍 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

九紋龍 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

 

 

 いい。どんどん良くなっている。昂奮度合いは前作『夜哭烏』のほうが上だったかもしれない。しかし巻が進むにつれ、読者のなかで登場人物の人となりがますますはっきりと像を結び、どんどん思い入れが深まっていく。本作ではさらに興味深いキャラクタの戸沢正親という藩主の親戚筋の男も登場した。次巻でこの男がどのように絡んでくるのか想像するのも楽しい。シリーズものとして完全に成功しているといえる。ぼろ鳶組・組頭の松永源吾の妻・深雪の魅力がますます際立ち、火消という男の世界に華を添えているところも見逃せない。