YouTubeで落語。本日取り上げる一席は『鼠穴』。矢野誠一氏の『新版 落語手帖』の274席には取り上げられておりませんが名作です。立川志の輔と立川談志で聴きたいと思います。というのも志の輔にとってこの噺が特別のものだからです。志の輔は『鼠穴』について次のように語っています。
入門する2年ほど前、国立演芸場で師匠談志の鼠穴を聴きました。腰が抜けて立てませんでした。落語を聴いて泣いたのは後にも先にもこのときだけです。後半、兄貴が憎くて涙が出ました。勿論ストーリーを知らないわけではありません。なのに涙が止まりませんでした。今思うと、この落語を演りたくて落語家になったのかもしれません。
談志自身はあまり好きな噺ではないなんて言っていますが、それでも名演だと思います。
そして志の輔は兄貴の憎たらしさの表現において談志師匠を超えたように私は思います。
どうしようもなく救いのない噺が最後に一転。これこそ落語のよいところ。何度でも聴きたい名作です。