佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『初恋料理教室』(藤野恵美・著/ポプラ社)

『初恋料理教室』(藤野恵美・著/ポプラ社)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

心の空腹、あたたかく満たします。心の空腹、あたたかく満たします。
京都の路地にたたずむ古びた町屋長屋。どこか謎めいた小石原愛子先生が営む「男子限定」の料理教室では、今日もさまざまなドラマが起こる――。『ハルさん』の著者が贈る、滋味たっぷりのやさしい物語。巻末には、作中に登場する料理の特製レシピも掲載!
☆本書の処方箋(レシピ)☆
第一話の一皿「縁を結ぶもっちり生麩」気になる女性の一言がきっかけで、料理教室に飛び込んだ建築家の卵・智久。不器用な恋の行方は如何に。
第二話の一皿「頑なな心を溶かすデザート」お菓子作りと女性をこよなく愛するパティシエ・ヴィンセント。自分の店を構えようとした矢先、思わぬ事件が起きる。
第三話の一皿「幸せになるための精進料理」男子限定のはずの料理教室に、フランス人形めいた装いで現れる性別不詳のミキ。一緒に食卓を囲む相手とは。
第四話の一皿「愛情尽くしの粕汁」家事も子育ても全部妻に任せきりだった彫金職人・佐伯。突然「料理教室に通ってください」と言い渡され……。

 

初恋料理教室

初恋料理教室

 

 

 藤野恵美さんの小説を読んだのはこれが二冊目である。一冊目は『ハルさん』2013年7月7日のこと。なぜ読もうと思ったかは記憶にない。おそらくウェブ上での書評をきっかけに読んでみたいと思ったのだろう。ただ、しみじみ感動したのは覚えている。

http://jhon-wells.hatenablog.com/entry/2013/07/07/071937

 読み始めて、終盤になるまでなかなか調子が出なかった。その原因の一つは「お」である。私は料理の先生の言葉がなんとなく苦手なのである。たとえば「次はお大根を面取りして・・・」とか「今日のお出汁は昆布にしましたが、ひたしておく時間がなければ、ふつうのお水でもかまへんです。骨付きのお肉からは、それだけで充分にうまみがでますから」といった言葉である。なぜ「次は大根を面取りして・・・」とか「今日の出汁は昆布にしましたが、ひたしておく時間がなければ、ふつうの水でもかまへんです。骨付きの肉からは、それだけで充分にうまみがでますから」と言わないのか。野菜を「お野菜」とか、洋服を「お洋服」とか、ビールを「おビール」とか、名詞の上に「お」をつけたがる人が増えてきているが、過剰な「お」が鼻について仕方がないのだ。また、二つ目の例文でいうと何故「出汁」と「水」と「肉」には「お」を付けて、「昆布」には「お」が付かないのかなんてことも気になってしまう。気になり始めると、そこに気が散ってしまって物語に入り込めないのだ。いきなり小言をならべてしまった。藤野さん、すみません。

 とはいえ、料理は私が興味のある分野であり、また心温まる人情話が大好きなので結果としてそれなりに満足している。特に第四話「日常茶飯」が良かった。そろそろ老いの年代にさしかかろうとする夫婦の話。おたがいが信頼し合い、思いやりを持っている姿に胸が熱くなる。今日は寒い日だが、ほっこりこころが温まりました。

 心に残った言葉。

自分の食べるものを、自分でこしらえる。

正しく食べていれば、正しく生きていけるだろう。

(本書P216より)