佐々陽太朗の日記

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『暗い越流』(若竹七海・著/光文社文庫)

『暗い越流』(若竹七海・著/光文社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

凶悪な死刑囚に届いたファンレター。差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた!(表題作)女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり…。(「蝿男」)先の読めない展開と思いがけない結末―短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。

 

暗い越流 (光文社文庫)

暗い越流 (光文社文庫)

  • 作者:若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/12
  • メディア: 文庫
 

 

 

 葉村晶を追いかけて若竹七海さんを読んでいる。先日『さよならの手口』を読んだのだが、葉村晶は四〇代。読み終えてから『暗い越流』に収められている短編の葉村晶が三〇代で年齢順に追いかけるとすれば読み飛ばしてしまったことに気づいた。慌てて『暗い越流』を読んだという次第。

 本書には以下の五篇が収められている。(★印は葉村晶もの)

  1. 蠅男 ★
  2. 暗い越流
  3. 幸せの家
  4. 狂酔
  5. 道楽者の金庫 ★

 やはり葉村晶はイイ。しかし葉村晶は長編ものの方が良い。そのあたりは好みによるだろうが、私にはそう思える。他には表題作「暗い越流」がもちろん良いが、私の好みは「狂酔」。ある男の独白のみで事の顛末が徐々に明らかになっていくスリル。少しずつ真実が見えてくる中で感じるなんとも言えない落ち着かない心持ち。ぞっとする結末。若竹七海さんの持ち味が存分に発揮された短編だろう。ただ、しばらくカレーが食べられないかもしれない。

 読後感をうまく表現するのはなかなか難しいのだが「ぞわぞわっ」とする感じ、かな?