佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『鉄道員(ぽっぽや)』(浅田次郎:著/集英社文庫)

鉄道員(ぽっぽや)』(浅田次郎:著/集英社文庫)を読みました。かなり前に読んだものだ。手元の本が2007年11月7日第23刷なので読んだのは2007年の暮れか2008年ごろのことに違いない。最近、本棚にある既読本を少しずつ会社の図書コーナーに寄贈しており、本書もそうしようと思ったのだがどうしてももう一度読みたくなった。再読であらすじを殆ど覚えているにもかかわらずボロボロ泣いてしまいました。

 出版社の紹介文を引きます。

娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。

映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録。

日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラー作品集にあらたな「あとがき」を加えた。

第117回直木賞を受賞。

 

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

  • 作者:浅田 次郎
  • 発売日: 2000/03/17
  • メディア: 文庫
 

 

 秀逸なのは何と言っても「角筈にて」である。様々な人物の心情を描いて見事。涙ぼろぼろであった。泣けると言えば「ラブレター」も。そして「鉄道員(ぽっぽや」と「うらぼんえ」は泣けるだけでなく温かみと優しさが加わっている。「ろくでなしのサンタ」もじんわり温かい話。「悪魔」「伽羅」はブラックな話。活力満ち満ちた二十代三十代のころなら興を覚えたかもしれないが、還暦の身には少々辛い。そして短編集の最後を飾る「オリオン座からの招待状」のなんと味わい深いことか。

角筈にて」「鉄道員」「うらぼんえ」が死んだはずの人が蘇る奇蹟なら、「オリオン座からの招待状」は閉館する映画館が壊れてしまった夫婦の心の中に起こした奇蹟だ。それにしてもたくさん泣いた。物語の主人公たちの流す涙に比べて、私の涙のなんと眇たることか。