佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『狩りの風よ吹け The Hunting Wind』(スティーヴ・ハミルトン:著/越前敏弥:訳/ハヤカワ文庫)

『狩りの風よ吹け The Hunting Wind』(スティーヴ・ハミルトン:著/越前敏弥:訳/ハヤカワ文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

30年ぶりの再会だった。私立探偵アレックスのもとを訪れたのは、かつてバッテリーを組み、共に一流のメジャーリーガーを夢みた親友だった。その夢を捨て、音沙汰のなかった彼が、昔の恋人の捜索を依頼してきたのだ。アレックスは旧友のために彼の最愛の女を追うが、まもなく何者かに暴行を受け監禁される…やがて明らかになる悲劇的な真相とは? 雪解けの水のように清らかな感動があふれる、現代ハードボイルドの収穫。 

 

 

 

 30年ぶりに会った友に感じる友情と疑心、そして抗しがたい魅力を持つ女、そうしたものの中で揺れ動く心優しく友情に篤い探偵アレックス・マクナイトの姿がイイ。純情といえば純情すぎる。お人好しといえばお人好しすぎる。50歳近いオジサンがそんなことでどうすると言いたい気持ちもないではないが、そこがアレックスの魅力なのだ。これまで散々人の醜い様を目の当たりにし辛酸を嘗めてきた男が、それでも友を信じ美しい女を守ろうとして痛い目に遭う。作中アレックス本人が「わたしはこの星いちばんの大ばか者だ」 と言っているように、自分を頼りにする者を見捨てることができない性質はやはりハードボイルドの主人公としてふさわしい。困っている者、弱き者をそのままにしておくことを良しとしない気高い心こそが自分の最も大切とするものなのだ。だからこそ、自分自身を大ばか者と罵りながら関わっていくのである。

 私立探偵アレックス・マクナイト・シリーズを読むのはこれが三作目。上梓されているのは8作あるようだが、邦訳されているのはこれですべてだ。原文を読むだけの英語力がないのが残念だ。

 

『氷の闇を越えて A Cold Day in Paradise』

https://jhon-wells.hatenablog.com/entry/2019/04/09/072208

 

『ウルフムーンの夜 Winter of the Wolf Moon 』

https://jhon-wells.hatenablog.com/entry/2019/06/23/081806

 

 最後にアレックスが父親から女について忠告を受けたことを思い出すシーンが印象的だったので記しておく。

「いつも真実を話してくれる女を探すことだ」。いつだったかそう言っていたが、異性について忠告らしきことをされたのは、その一回きりかもしれない。「隠し事をしない女でさえ、こっちはなかなか理解できないんだ。嘘をつかれるようになったら、勝ち目はないぞ」 

 箴言といってよいのではないか。