佐々陽太朗の日記

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『変見自在 朝日は今日も腹黒い』(髙山正之:著/新潮社)

『変見自在 朝日は今日も腹黒い』(髙山正之:著/新潮社)を読みました。

週刊新潮」連載の超辛口名物コラム傑作選、第11弾です。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

本日も反省の色ナシ。
新聞界の「裸の王様」の正体教えます!

怒鳴る、威張るは当たり前。記事を批判する相手には、殴り込みも厭わない。不勉強で思い込みが激しく、間違ってもすぐには認めない。そんな記者が記事を書くとどうなるか――慰安婦、毒ガス、外交等の歴史問題からサンゴ損傷、原発まで。常に第一線で対峙してきた著者だからこそ知る“あの新聞”のイヤらしさを一挙大放出! 

 

 

変見自在 朝日は今日も腹黒い

変見自在 朝日は今日も腹黒い

  • 作者:髙山 正之
  • 発売日: 2016/10/18
  • メディア: 単行本
 

 

 

 2015年7月から2016年7月に週刊新潮に掲載されたコラムである。既刊の10巻はそれぞれ皮肉を効かせ、物議を醸しそうな題名であったが、今回はさらに直接的で辛辣な題名である。著者がこれほどA新聞(本書の題名が題名だけに、こんなふうに伏せてもまったく意味が無いのですが)への憤りを隠せないのは本書の「はじめに」を読めば良くわかる。髙山氏自らの実体験に立脚しているのである。

 世の中には新聞を特にA新聞を信奉している人が未だに数多くいる。従軍慰安婦捏造報道や沖縄珊瑚礁KY落書き捏造報道、さらに遡って数々の不適切な報道があったことが明るみにでてなおである。何を信じるかは個人の勝手である。人の世の真実は必ずしもひとつではない。ものの見方によって真実と思われたものが嘘になり、嘘と見えたものが本当になる。真実はそれを語る者の都合によって180°見え方が変わるものである。従って、本書を読んでなるほど「朝日は今日も腹黒い」と単純に思いこむのも危険かもしれない。各章、各節に書かれたことの真偽をひとつひとつ検証し裏を取ることがこうしたものを読むときにとるべき姿勢だろう。しかし、これほど多くの事例を実名で示されてはいかにもA新聞は分が悪い。というより勝負あった、と私は思う。

 本書を読むにあたっては、城山三郎氏の小説『鼠』と玉岡かおる氏の小説『お家さん』を合わせて読むと良いだろう。鈴木商店焼き討ちの原因となった「鈴木商店が米を買い占めている」との大阪朝日新聞の報道が作為的陽動であったのではないかという視点書かれている。小説だけに虚実織り交ぜてあるだろうが、新聞に書いてあることを鵜呑みにすることの危うさ、ペンの暴力の恐ろしさが真に迫って面白い。