佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ランボー怒りの改新』(前野ひろみち:著/星海社FICTIONS)

ランボー怒りの改新』(前野ひろみち:著/星海社FICTIONS)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

森見登美彦氏、激怒――?!
私の奈良を返してください!
さすがにこれはいかがなものか!

ある夏、ひとりの青年が斑鳩の里にフラリと現れた。
泥沼のベトナム戦争を強引に継続する蘇我氏に対し、あの男(傍点振る)が怒りの鉄槌を下す。律令国家日本の誕生を大胆に再解釈する表題作「ランボー怒りの改新」。
おバカな中学生男子三人組と、ミステリアスな同級生・佐伯さん。誰にでも訪れる新緑の季節、その一コマを鮮やかに切り取った「佐伯さんと男子たち1993」。
生駒山中に山荘を構える、仙人のごとき謎の老人。彼の元を訪れた乙女の語る、奇想天外な奈良風『千一夜物語』の行き着く先は……?(「ナラビアン・ナイト」)
そして、作家を目指す浪人生・前野弘道と、彼のもとに舞い降りた小説の女神・佐伯さんを巡る追想記「満月と近鉄」。
いずれも古都・奈良を舞台とする、驚天動地の傑作四編を収録。異形の新人・前野ひろみち、ここに衝撃デビュー!
解説:仁木英之

 

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

 

 

 第一編「佐伯さんと男子たち 1993」を読み始めるなり、これはひょっとしてモリミーではないかと疑った。森見登美彦氏と同じニオイがする。いや前野ひろみち氏の中に登美彦氏が住んでいるのではないか。憑依? 怖い話である。文章のそこかしこにハッとする箴言がひそんでいるのだ。全く意味不明だが疑いようもなく真理を突いていると読者に錯覚させる言葉の数々。たとえば「鹿がアホであるという前提」や「われわれ人類はつねに、水泳パンツが脱げなくなる危険性に直面している」などというフレーズが出てくるたび、私の心は震えるのである。

 四つの短編それぞれに驚きを持って読んだ。在野の俊豪はやはりプロらしくなく、文学に対する姿勢はピュアと見える。私のように小説をそれこそ手当たり次第に乱読してきた者には、それが切なく胸にせまった。忘れられない一冊。

 ちなみに本書は最近『満月と近鉄』に改題、文庫化されて好評発売中だという。こちらには登美彦氏と前野氏の対談が巻末に収録されているという。ならばそれも読まねばなるまい。

 

満月と近鉄 (角川文庫)

満月と近鉄 (角川文庫)