2020/10/16
『虹の岬の喫茶店』(森沢明夫:著/幻冬舎文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
小さな岬の先端にある喫茶店。そこでは美味しいコーヒーとともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人人―彼らの人生は、その店との出逢いと女主人の言葉で、大きく変化し始める。疲れた心にやさしさが染み入り、温かな感動で満たされる。癒しの傑作感涙小説。
小豆島にロードバイク・ツーリングに出かけるのに携えて行った本。朝、家を出る前に本棚の積読本をひととおり閲し、海のイメージでこれだと選んだものです。
想像したとおりの小説でした。想像どおりというのは、ストーリーではなく、この小説のテイスト、読み心地です。読んでいる間、岬の喫茶店から見る景色と波の音、店にただよう珈琲の香り、BOSEのスピーカーから流れてくる音楽、そうしたものがまるで映画を観るように頭の中にイメージできました。
生きていくうえでの悲しみ、大切な人へのいとおしい気持ち、自分の弱さを知りつつ折れるわけにはいかないと懸命に立ち続ける姿、たまたま袖振り合った人への温かいまなざし、そうした真心が引き起こすささやかな奇蹟が描かれています。
ささやかな奇蹟といえば、この本を携えて小豆島を走っている最中、岬にさしかかったときに海の向こうに虹がかかりました。偶さかの出来事です。それでも生きているっていいなぁと思わせてくれた出来事でした。