佐々陽太朗の日記

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『魔界転生 上・下』(山田風太郎:著/角川文庫)

2020/12/23

 『魔界転生 上・下』(山田風太郎:著/角川文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

【上巻】

島原の乱に敗れ、かろうじて生き延びた天草側の軍師、森宗意軒は、幕府への復讐を誓い、死者再生の秘法「魔界転生」を編み出した。それは、現世に不満を抱く希有の生命力の持ち主を魂だけ魔物にして蘇生させるという桁はずれの超忍法だった。これにより次々と魔界から蘇る錚々たる武芸者達。彼らを操り、紀州大納言頼宣をそそのかした森宗意軒は、さらに由比正雪を手先として本格的に幕府転覆に乗り出した…。驚愕と戦慄の連続。息もつかせぬ展開。天才山田風太郎の最高傑作。

 

 

【下巻】

幕府転覆を企む森宗意軒の野望阻止に柳生十兵衛は敢然と立ち上がった。敵は天草四郎を筆頭に、宮本武蔵、荒木又右衛門、柳生但馬守、柳生如雲斎…。秘法「魔界転生」によって蘇り、生前と同じ容貌、剣技を持ちながら、この世のあらゆる道徳に背反する魔人たち。隻眼まなじりを決し、孤剣を抱いて十兵衛は、殺戮マシーンと対峙してゆくが…。史上最強の殺人集団と十兵衛との壮絶無比の大死闘。群を抜く着想と圧倒的なスケール。剣豪小説、伝奇小説の極北として屹立する、日本エンタテインメント界の金字塔。

 

 

 最強と言い伝えられる剣豪は数多いる。誰が一番強かったのだろうというのは、剣豪小説を読む者なら誰しもが思うことではないか。佐々木小次郎宮本武蔵の巌流島の決闘は有名だが、それとて雌雄を決したのは時の運であったとか、武蔵の策略勝ちだとか、実は武蔵は一人で戦わなかったというものまで、実はどちらが強かったかについては諸説入り乱れて興味深いところ。歴史に名を残す剣豪がそれぞれ戦ったらどんな戦いになるのだろう、どちらが勝つのだろう。一度、戦わせてみたい。そんな夢みたいなことをこの小説はかなえてくれる。

 本書のヒーローは柳生十兵衛三巌、それに対する魔界衆(島原の乱の軍師・森宗意軒が生き延び、編み出した忍法「魔界転生」によって生き返らせた者たち)は天草四郎時貞宮本武蔵、荒木又右衛門、柳生利厳、田宮坊太郎国宗柳生但馬守宗矩、宝蔵院胤舜といずれ劣らぬ強者たち。柳生十兵衛と魔界衆との闘いはまさに息を吞む緊迫感で読み手を楽しませてくれる。

 剣豪ものとして充分楽しめるのだが、そこはエンターテイナーたる山田風太郎。それだけにとどまらず、かわいらしい三人娘が囚われたり、あやしい魅力をたたえたくノ一を登場させたりと男心をくすぐってくる。このあたり女性読者にはどう映っているのか訊いてみたい気もする。

 山田風太郎、天才エンターテイナーです。忍法帖シリーズ、これからも読んで参ります。